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丸山 佳久

丸山 佳久 【略歴

“地域”を体験するフィールドワークと地域活性化のビジネスプランづくり

丸山 佳久/中央大学経済学部准教授
専門分野 会計学、環境会計論、メソ会計

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はじめに

 地方創生が重要な政策課題に位置付けられています。そのために、地域の特性を正確に理解して、住民との緊密なコミュニケーションのもと、企業や自治体、NPO等と連携して地域のイノベーションを推進する人材が求められています。また、このような人材には、組織及び地域の総合的なマネジメントを担うことが期待されています。中央大学は教育のグローバル化の一環として、日本の“地域”を学生に体験させるフィールドワークと、その体験を踏まえ地域活性化をビジネスプランとして具体化させる取り組みを始めています。

“東京”の地域的な大学と教育のグローバル化

 中央大学の2015年度入学試験の志願状況を見ると、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県という、いわゆる“東京”の出身者が約64%(前年比約2%増)になります。また、“東京”に茨城県・栃木県・群馬県・山梨県を加えた首都圏の出身者は約72%(前年比約2%増)になります。このような数字からわかるとおり、中央大学は、“東京”あるいは首都圏という地域に依存した大学になっています。

 他方、近年、中央大学は教育のグローバル化を推し進めており、海外インターンシップや交換留学等を通じて学生を積極的に海外に送り出し、あるいは、海外から受け入れて、地球規模で活躍できる人材、いわゆるグローバル人材を養成しようとしています。例えば、経済学部は中央大学から教育力向上推進事業(2013-2015年度)という競争的予算を獲得し、その一環として2014年度からグローバル人材の養成を行なうグローバル・リーダーズ・プログラムを始めました。ここでは、TOEICのスコアアップやコミュニケーション能力の向上を図るだけではなく、演習における海外でのフィールド活動が条件になっています。

 “東京”の地域的な大学となった中央大学が教育のグローバル化を推し進める。そのために、日本各地に多様な風土・文化があるにもかかわらず、“東京”しか知らない学生たちを地球規模に展開させる、あるいは、海外からの学生たちに“東京”しか体験させることができない事態になっています。

被災地及び中山間地域におけるフィールドワーク

 このような観点から、グローバル・リーダーズ・プログラムには、国内でのフィールドワークという選択肢が用意されています。私のゼミでは、東日本大震災の被災地における復興支援活動の実態調査や、中山間地域における農業・林業体験等を実施し、それを踏まえて、被災地や中山間地域の復興や活性化をビジネスプランとして具体化させる取り組みを行なっています。

 2014年度は、9月に夏合宿として、NPO法人紫波みらい研究所の案内で、岩手県紫波町において農業体験を行なったり、バイオマス資源化の取り組み、地域活性化の取り組み(オガールプロジェクト)等の調査を行なったりしました(紫波町アグリプロジェクト)。オガールプロジェクトとは、請願による新設駅の駅前の町有地に、PPP (Public Private Partnership) という公民連携の開発によって、図書館・産直・ホテル等を整備しようという取り組みです。

 また、3月に春合宿として、富士ゼロックス株式会社の復興推進室の案内で、岩手県釜石市・大槌町等にて被災地の復興支援事業の調査を行なったり、遠野市において林業体験を行なったり、木材/木製品の6次産業化に向けた展開を探ったりしました。富士ゼロックスの復興支援事業は、企業と地域社会が共同で価値を創出する CSV (Creating Shared Value) の代表的な事例です。

 これらのフィールドワークを踏まえて、2015年度のゼミでは、紫波町や釜石市・遠野市等を具体的なフィールドとして、ビジネスプランの具体化を行なっていきます。日本の財政を考えると、補助金に依存した従来型の地域振興に、これからも頼っていくことはできません。農業・林業やバイオマス事業を始め地域にある資源を活かして、できるだけ補助金に頼らずに地域活性化を図るために、企業や自治体、NPO等が連携するビジネスモデルを作っていかなければなりません。

 私のゼミは会計学・環境会計のゼミですから、ビジネスプランの具体化にあたっては、売上のあがり方やコストのかかり方、地域的サプライチェーン/産業クラスターを通じた経済効果・環境影響等に対して、経営・会計手法を用いて分析を行ないます。2015年度も紫波町や釜石市・遠野市等でのフィールドワークは継続する予定です。

紫波町・(株)アグリ紫波にて稲作の刈取りを体験

紫波町・細川栄子さんの農園にて稲作の刈取りを体験

紫波町・鷹觜忠一さんの農園にて作業体験

紫波町・(株)高橋農園にてぶどうの収穫を体験

大槌町・(一社)おらが大槌夢広場にて「語り部」から津波被害の説明を受ける

被災した大槌町役場を視察(おらが大槌夢広場による「語り部による町内視察」)

釜石市・(一社)ユナイテッドグリーンのコーディネートによる中山間地域における過疎化・高齢化と集落消滅の実態調査

富士ゼロックス(株)の「遠野みらい創りカレッジ(遠野市)」にてフィールドワークの振り返り

まとめ

 “東京”という一地域の大学となった中央大学は、教育のグローバル化を推し進める上で、企業や自治体、NPO等と協力して日本の“地域”を体験させる取り組みを始めています。学生たちは日本の多様な風土・文化をフィールドワークとして学び、グローバル人材を目指します。このようなグローバル人材こそが、地域のイノベーションを起こし、組織及び地域の総合的なマネジメントを担うと考えています。安倍内閣が打ち出した地方創生と教育のグローバル化は意外なところで結び付いています。

紫波町・えこ3センターにてバイオマスの資源化を視察

紫波町・松坂みき子さんの果樹園にてぶどうの収穫を体験

大槌町・赤浜地区の被災状況を視察(おらが大槌夢広場による「語り部による町内視察」)

丸山 佳久(まるやま・よしひさ)/中央大学経済学部准教授
専門分野 会計学、環境会計論、メソ会計
千葉県出身。1972年生まれ。1995年中央大学経済学部国際経済学科卒業。
1997年中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。
2001年中央大学大学院経済学研究科博士後期課程満期退学。
2009年中央大学大学院経済学研究科博士後期課程終了。博士(会計学)(中央大学)。
広島修道大学商学部専任講師・人間環境学部専任講師・助教授・准教授を経て2011年より現職。
現在の研究課題は、被災地や中山間地域にある資源を用いて地域を活性化する新たなビジネス・事業を、地域全体での経済的/環境的影響から評価する環境会計(メソ会計)である。
また、主要著書に、『会計と社会-ミクロ会計・メソ会計・マクロ会計の視点から-』(共著、中央大学出版部、2015年)、『地方自治の深化』(共著、清文社、2014年)、 『森林バイオマス活用の地域開発-鍵を握る産業クラスター-』(共著、中央経済社、2013年)等がある。