トップ>オピニオン>若者は「ゴッコ」ではなく、起業や政策形成など「ホンモノ」の社会実践に関わりながら学ぶべき

オピニオン一覧

高橋 亮平

高橋 亮平 【略歴

若者は「ゴッコ」ではなく、起業や政策形成など「ホンモノ」の社会実践に関わりながら学ぶべき

高橋 亮平/中央大学商学部特任准教授
専門分野 地方自治・行財政改革・若者参画・キャリア教育

本ページの英語版はこちら

若者が政策形成に関わるアクティブ・ラーニング「自治体版PBL」の実践

 9月26日、特任准教授を務める中央大学で、高大連携の体験学習プログラムとして、高校1年生約40名を対象に自治体における課題発見と政策形成に挑む『自治体版PBL(Project-Based Learning)』を実施した。

 千葉市からの「こども若者参画政策の提案」をミッションに課題解決に挑み、「学生だけの学生市役所を作ってみてはどうか」といった斬新な提案から、参画のためにわざわざ市の事業に参加するのはハードルが高いので、各学校に「市に提案するための委員会を作ってみてはどうか」といった、学校活動に参画を埋め込んでいくアイデアなどが提案され、そもそも情報が共有できていないことが問題だとして、高校生に情報を伝えるためにSNSを使ったり、高校生同士で情報を発信させたりするべきなど、当事者ならではの声も聞かれた。

 終了後は、慣れない政策形成にも関わらず、参加者全員が「楽しかった」とコメントした。

 今回の場合は、3時間の限定的なプログラムだったが、参加したこども若者参画部署の自治体職員たちからも、「実際に反映できそうなヒントもあった」、「大きな可能性感じた」との評価をもらった。

 今回の『自治体版PBL』プログラムは、大学での実施はもちろん、さらに低年齢の高校や中学レベルでも、通常通りの15回、あるいは短縮版の3~5回程度のプログラムとして行えるのであれば、より質の高いものが実施できる。

 ミッションを提供してくれた千葉市はじめ各自治体において、さらに色々な学校で実施してもらい、こうした授業での提案から声を吸い上げ、実際の政策に活かしてもらえたらと思っており、関心のある自治体や学校があれば、是非、ご連絡いただきたい。

若者の政治参加は、自治体現場がメインになる

 今回実施した『自治体版PBL(Project-Based Learning)』は、18歳選挙権実現を意識したもので、主権者教育のプログラムとしてはもちろん、PI(Public Involvement =住民参画)の視点から学生や若者が政策形成に関わり、さらにその提案が政策に反映される本質的な参画のスキームとして機能する仕組みにしていく事を期待している。

 選挙権が18歳へと引き下げられた事から、今後こども若者をどう参画させていくかという事には関心が集まる事が予想されるが、一方でこの国の中には未だ実質的な参画の仕組みはほとんど整備されていない。中でも今後、若者参画の主現場になる自治体において、政策形成や教育現場と連動させたモデルの構築に踏み込めるかが重要である。

 千葉市ではさらにこのPBL(Project-Based Learning)を長期インターンシップに組み込んだ『こども若者参画・生徒会活性化インターンシッププログラム』も開始した。

 こども若者参画の先進自治体をめざす千葉市の政策を当事者ないし当事者に近い目線から評価、課題発見、問題解決策など検討、提案することで、より価値のある政策形成を行うと共に、自治体現場での政策形成などを直接体験し、地方自治や行政への関心を高め、行政にとって新しい公の担い手としてのパートナーシップを期待したものだ。興味のある人は、今からでも連絡して欲しい。

 千葉市に限らず、いくつかの自治体に対して、さらに踏み込んだこども若者参画の仕組みを提案し、それが実現出来るよう現在働きかけているところだ。

現場や実際の取り組みから学ぶ新たな教育プログラムが必要

 PBL(Project-Based Learning)は課題解決型学習のプログラムであり、企業において社員へのトレーニングなどで用いられるOJT(On-the-Job Training)をアクティブ・ラーニングに用いたもので、中央大学商学部では1年生を対象に「ビジネス・プロジェクト講座Ⅰ」と題し、これまでにサントリー、オリエンタルランド、キッコーマン、JAXA、APAホテルなどに具体的なミッションをもらい、学生は擬似「社員」としてグループワークにより解決策を検討、上司役の実際の社員や経営者たちを前に提案をプレゼンする形で行っている。

 かつての大学の授業は、大教室で教授が黒板に書いたものをノートに取り、話をメモするなど座学形式のものが多く、知識を得ることを主眼としてきたが、教育現場においても時代と共に変化が求められ、生徒が主体的に学ぶアクティブ・ラーニングの必要性が言われる様になってきているのだ。

 PBL(Project-Based Learning)プログラムでは、プロジェクト実行のためのフレームワークの設定から、実施計画の立案、プロジェクト実行まで、すべてを学生自ら行う。その過程で、学生たちが課題解決に向かって積極的、主体的に取り組むことにより、学習意欲を強く持つとともに、通常の講義では得られないロジカルシンキング、課題解決能力、プレゼンテーション能力、デザイン力などといった実践的な力を身に付け、目覚ましい成長を遂げるなど、その効果は高い。

若者は起業や政策形成など社会実践に主体者として関わりながら学べ

 こうした教育プログラムと同時に、中央大学の学生たちと「中央大学起業家サークル」といったプラット・フォームも構築したところ、設立半年で4つの学生企業が誕生した。

 今回の主テーマは社会的な参画だが、経済成長や新規産業の創出ができる人材の育成という視点から考えれば、経済においても同様に若者を主体者として企業実践に取り組ませながら学ばせていく仕組みを創る事が重要である。

 今回提案した社会参画の仕組みもそうだが、こうした経済分野においてもそう、さらに言えば、大学改革や教育改革をどう行っていくかという事についてもまた、学生を主体者として巻き込んでいく事が、大学自体にとってもその未来に対して大きな可能性を創るのではないだろうか。

 大学時代の2000年、選挙権年齢引き下げと政治教育の充実を柱に若者の政治参加を求めるNPO法人Rightsを立ち上げた。以来、国会審議においても衆議院の憲法審査会や倫選特などで参考人として意見陳述するなど、この間、あらゆる働きかけを行う事で、15年続けようやく2016年夏の参院選挙からの「18歳選挙権」が実現した。

 時代は変わり、右肩上がりの経済状況から低成長へ、社会問題はより多様化、マトリクス化する中で単純解決する事ができず、より広い知恵を活かさなければ解決できない時代になってきている。

 税と社会保障の問題はじめ世代間格差の拡大など、社会問題解決も現在の視点だけでなく、より長期的視点に立った問題解決が求められる。

 こうした時代の中では、単に約240万人の有権者が増える事や、若者が選挙に行く様になる事だけでなく、「18歳選挙権」をキッカケにどう若者を政治や社会の当事者だと位置付け、どう参画させる仕組みが構築できるかが問われている。

高橋 亮平(たかはし・りょうへい)/中央大学商学部特任准教授
専門分野 地方自治・行財政改革・若者参画・キャリア教育
中央大学特任准教授、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザー、明治大学世代間政策研究所客員研究員。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。市川市議、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員、松戸市政策担当官・審議監、NPO法人万年野党事務局長等を経て現職。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省IVプログラム等選出。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等メディア出演。主著に『世代間格差ってなんだ』、『18歳が政治を変える!』他。
twitter: @ryohey7654 new window facebook: /ryohey7654 new window