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内山 勢さん

内山 勢さん【略歴

記者30年気持ちは学生と一緒

内山 勢さん/毎日新聞「キャンパる」編集長

 毎日新聞記者、週刊誌「サンデー毎日」記者、経済誌「エコノミスト」のデスク、「BS11」テレビのプロデューサー&キャスター。マスコミの主要職種を経験した毎日新聞編集委員の内山勢(つよし)さんは、中央大学経済学部を1983年に卒業した。記者生活30年のいまは学生情報満載の「キャンパる」編集長。毎週金曜日夕刊(東京本社管内)と毎月1回火曜日朝刊で特集ページを展開中だ。キャンパるとは、キャンパスとパル(仲間=スペイン語)の造語。内山編集長にマスコミの仕事、学生気質今昔などを聞いた。

憧れの白いキャンパス

――学生情報の新聞づくりを聞く前に、ご自身の学生生活をぜひお聞きしたい

資料が積まれた編集委員室で、学生記者の質問に答える内山さん

 「白い校舎、広大なキャンパスにあこがれて、中央大学を目指しました。
 法学部、経済学部、商学部を受験。法学部が第一志望でしたが、第二志望の経済学部で学びました。多摩キャンパスの2期生。あこがれたキャンパス、当時は多摩センターからバスに乗り換えました。通学は不便でしたが、ワクワクしました。勉強する環境に適していましたね」

――熱中したことは

 「ゼミです。経済政策のゼミで当時関心を集めた福祉政策を勉強しました。3年と4年のゼミが充実。サークルではマスコミ志望者が集まる、グループHに入ってました。現役やOBのマスコミ人の話を、神保町の喫茶店ラドリオなどで聞いてました。大学でともに勉強して、ときには酒を飲む。4年間の一番の宝物は、友人をつくること。30年経ったいまでも付き合いがあり、マラソンを一緒に走ります」

――記者になるきっかけは

 「ガチガチのマスコミ志望ではなかったのだけれど、人一倍正義感が強いようで悪いことは悪いという性格が記者の道へ導いてくれたと思います。新潟の実家では祖父の代から毎日新聞を購読していて、新聞といったら毎日。当時は4年生の10月から会社訪問が始まり、マスコミ各社は11月に筆記試験。一般企業の友人が内定をもらった話を聞きながら、筆記試験対策の勉強をしていました。結果、毎日と相性が良かったようです。今だから言いますが、早い時間に会社に登録手続きに行ったら、受験番号は1番。内定後人事の方から『1番はここ数年受かっていない』と言われ、冷や汗が出たのを覚えています(笑い)」

新聞と週刊誌の違い

――思い出の仕事は何ですか

毎日新聞社屋

 「最初は毎日新聞山形支局で4年半。次にサンデー毎日へ異動。青天のへきれきでした。人事は断わるものではないと思い、サンデー毎日へ。ここで新聞と週刊誌の違いを知りました。警察回りをして、ニュースを抜いたり、抜かれたりが新聞報道。記事も見出しと前文を読めばだいたいわかる。そう書くよう教えられます。週刊誌はあす発表のものを前日に書くことではなく、読者に読まれる記事を書く。記事の導入部では、有名な映画や小説のワンシーン、一節を入れるなど読者を“いらっしゃい”と呼び込む。日ごろ勉強していないと記事が書けない。記事量も新聞にいたときの4倍に増えた。ストレスなんでしょうね。毎朝寝汗でパジャマがびっしょりでした。当時の編集長は鳥越俊太郎さん。のちにテレビに移り、ニュースキャスターとして活躍しています。副編集長は牧太郎さん。オウム真理教の追及キャンペーンを連載するなどタブーに挑戦した人です。牧さんは脳卒中で右半身の自由を奪われ失語症にも苦しみました。退院後1カ月、銀座の交差点を自力で渡ることに挑戦したと聞きました。マヒした右足を懸命に動かす。“信号が赤になったら…、そう思うと足がすくんだ”と自書の『新聞記者で死にたい』(中公新書)にも記しています。不屈の努力で翌年には社会復帰。いまでもコラムを書いています。2人とも厳しい人でした。鳥越さんには週刊誌記事の書き方を学び、牧さんには人間の生きざまを見せてもらいました」

 その後、大阪社会部、高松支局、サンデー毎日、東京本社経済部、静岡支局デスク、エコノミスト誌、東京経済部、中部本社経済デスク、東京経済部を経て、BS11(日本BS放送)に出向し、プロデューサーになる。ニュース番組づくりではキャスターも務めた。

就活神話を打ち砕け

――異動や転勤が多くて大変なんですね

 「ハハハ。転勤ぐせがついてしまったようです」

――キャンパるとは

 「25年の歴史があり、わたしは4年目です。最初は学生が相手か、と思いましたが、来てみて驚いた。すごいところだと分かりました。就活で困っている学生がいる、学業やサークル、NPOに必死に取り組んでいる学生がいる。リアルな情報がここにあった。記者クラブや役所に頼らなくても、コンテンツの塊みたいなものが目の前にあったわけです。これまで新聞は学生の情報をあまり紹介してこなかった。私自身も子どもとナマの話をしていなかった。記者生活の後半を学生のための報道に貢献しようと決めました。新聞、週刊誌、テレビと回ってきて、オレしかできない仕事だと思うようになりましたね」

――就活の記事が多いように思います

親も必読! 学生記者が贈る 間違いだらけの就活!(毎日新聞社刊)

 「学生が経験したことを書いてきました。黒いスーツを着て、髪を束ねて、日経(日本経済新聞)を読めと言われて、本当にそうなのか。就職浪人をした息子を見て実感しました。就活情報が少なすぎる。情報が少ないから親としてはなぜ内定がとれないのか、なぜ就職浪人をするのか全くわからない。そんな親は多いはずです。記者として、親として就活に挑む学生を助けたいと思いました。それでキャンパる紙面で『就活最前線』のキャンペーンを張るとともに、学生記者に呼びかけ、就活神話を打ち砕く本を出版しようと考えました」

 <親も必読! 学生記者が贈る 間違いだらけの就活!(毎日新聞社刊)5月23日全国発売、880円>がそれです。

――どんな内容ですか

 「まずは、就活のうわさや常識がいかに根拠のないものであるかを知ってほしい。そのうえで、自ら考える就活を提案しています。お薦めのページは女子大生編。女子の就活は大変です。結婚、出産、子育てとライフイベントが多いですから、企業は女性の採用を渋りがち。女子アナになるには、キャビンアテンダントになるには。このあたりは週刊誌の発想です。就活生をもつ親御さんにもきっと役に立つと思います」

――中大の後輩たちに一言お願いします

 「男子はもっと活発的になれ、ですかね(笑い)。新聞の読み方を教える毎日新聞の提携講座を開いていて、首都圏の大学を回って学生と話す機会があります。そこで思ったのは、どこの大学も女子が活発。キャンパるの学生記者も7割以上が女性です。男子はもっと積極的になるべきです。何事も貪欲に!ですが、全体的にはみんな優秀ですよ。SNSやラインなど情報処理能力にたけています。今の若者は…ってよく言いますが、わたしは期待しています」

提供:『HAKUMON Chuo』2013夏号 No.232

内山 勢(うちやま・つよし)さん
1959年6月18日生まれ、新潟県出身。直江津高校卒業後、1983年に中央大学経済学部を卒業。その後、毎日新聞に勤務し、現在、毎日新聞編集編成局兼「教育と新聞」推進本部 編集委員兼キャンパる編集長。「体を動かすことが好き」で、剣道(三段)、弓道(初段)の腕前に、フルマラソン(完走8回)、登山を好む。「終わった後の爽快感がすごくいい」と週1度、毎日新聞社近くの皇居周回コース(1周5km)を走っている。「次男も昨年まで中大生でした」