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白石 亘さん

白石 亘さん【略歴

突破力を武器に、ミャンマーの最前線へ

白石 亘さん/豊田通商株式会社(豊通インシュアランスマネジメント株式会社 出向中)

 2011年、軍事政権に代わって民主化したミャンマー。後発開発途上国という位置づけから脱しようと、国内では急ピッチで開発計画が進められている。各国の外資系企業は、ビジネスチャンスを求めてミャンマーに参入。そんな企業たちのリスクマネジメントを支援しているのが、インシュアランスだ。豊田通商株式会社から豊通インシュアランスマネジメント株式会社に出向している白石 亘氏は、ミャンマーの地で、保険ブローカーという立場から経済成長を支える一役を担っている。

必要に迫られ始めた仕事で、学生生活が好転

 学生時代は語学ができませんでしたし、留学もしたことがありませんでした。勉強せず、野球ばかりやっていました。ところが大学1年生の時、けがをして野球ができなくなった。

 野球以外に何か情熱を傾けたいとの想いで、広告代理店でアルバイトを開始。アルバイト契約というのも少し面倒臭くなって、個人業務委託という形で独立し、学生の身分でありながら“ひとり広告代理店”を始めました。出版社やインターネット会社など広告媒体を持つ会社と契約して、飲食店やPR会社などにその広告媒体を販売するんです。学生だろうが社会人だろうが同じ金額を頂くわけですから、プロ意識を持って働いていました。この仕事でたくさん稼ぎ、営業先で知り会った広告代理店の人たちとの遊びに消えました。たとえ遊びでも、世代の違う人や年上の人との人間関係は社会勉強になり、素直に「かっこいいな。こんなビジネスマンになりたいな」と、刺激を受けましたね。

 就職するかこの仕事を続けるかには迷いがあり、就職活動はあまりやっていませんでした。そんななかで面接してくれたエン・ジャパン株式会社の現在の社長・鈴木孝二さんに耳力を感じ、エン・ジャパンの営業職に就きました。

ミャンマー経済に貢献できる保険ブローカーという仕事

ミャンマーの日常風景

 営業職で結果が出せたので、1年後に次へのステップとして豊田通商に転職しました。豊田通商は世界各地に拠点があり、金属や自動車、医療や食料など色々なカテゴリで事業を展開している会社です。海外で仕事がしたいという理由ではなく、「新しい事業を作りたい。市場を開拓したい」という思いで豊田通商にキャリアアップしました。

 豊田通商から豊通インシュアランスマネジメントに出向したのは2014年から。保険ブローカーとして、今では1年間のほとんどをミャンマーで過ごしています。

 ミャンマーが民主化したのが2011年。ミャンマー政府は日本政府に法制度の整備を依頼しており、2013年から法制度整備支援活動の協力が開始されています。そのなかで、豊通インシュアランスマネジメントは保険の側面から経済成長に貢献しています。ミャンマーはまだまだ開発途上段階。外資系企業が参入し、工場を建てるために火災保険をかけたくても、国営のミャンマーインシュアランスでは資金不足で保険を請け負えません。外資系企業はリスクを負った建設を嫌い、ミャンマーへの進出を踏み留まります。すると現地で雇用が生まれず、ミャンマーの経済成長が滞ってしまう。そこで僕たち保険ブローカーが、ミャンマーインシュアランスが受けた契約分の保険キャパシティを、海外の再保険会社から集めてくるんです。

海外生活で知った価値観を受け入れることの大切さ

白石さんが一緒に働いている同僚の方たち

 ミャンマーで活動している再保険ブローカーのうち、日本人は私ひとり。ほかの国を含めても、全体で5人くらいです。再保険会社との交渉で難しい面は、ミャンマーについて理解してもらうこと。再保険会社にとってミャンマーはまだまだ未開拓の地であり、保険請負に消極的です。そこで私たちは、「新聞ではこう言われているけれど、実際のミャンマーはこうだよ。このリスクはないけれど、こういうデメリットが実はあるんだよ」と、リアルな話を伝えて理解してもらいます。やはり、すぐに賛同は得られませんね。時間はかかります。この仕事に必要なスキルは、諦めないことだと思います。断られて引き下がるのではなく、嫌だと思っている理由を聞き出して改善策を練る。企業サイドには、改善するよう働きかける。諦めず粘り強くやることが必要です。

毎朝、ミャンマーの人々に交じり通っているパゴダ

 日本とのビジネススタンスの違いと言えば、ミャンマーはいい意味でウェットな人間関係が必要であるということ。ミャンマーは会社であっても、パソコンでメールをチェックしていないことが多々あります。ですから直接、会いに行ってface to faceで話をしなくてはいけません。しかし私は「仕事をするには、相手をよく知る必要がある」と思っているので、アポイントをとった時間の多くを雑談して、どんな経歴でどんな思いで仕事をしているか知り、残りの時間で契約の話をしています。相手を知って、自分のことも好きになってもらうことが、日本に限らず海外でも仕事を上手くやっていくコツだと思うからです。ミャンマーを含めアジアで仕事を始めて8年ほど経ち、たくさんの少数民族がいて出身地や宗教でマインドがずいぶん違うことに気が付きました。海外で仕事をするなら自分の価値観を押し付けず、いろんな価値観を理解する、受け入れる必要があると思います。相手のバックグラウンドを理解した上で仕事をすることは、非常に大切だと感じています。

自分の能力に限界を作るべからず!

 この仕事の醍醐味は、私のようないち社員がミャンマー財務省の大臣や保険会社の社長など、地位のある方たちと論議を交わせることです。学生たちに言いたいのは、語学の勉強は絶対にやっておくべきだということ。特に将来、グローバルに働きたいのであれば、なおさらやっておくべきです。私は学生時代、TOEICが何であるかすら知らない状態で、英語は豊田通商に入ってからOJTで覚えました。ですから逆に、そんな人間でも世界に出ればやれるので、自分の能力にキャップをしないで欲しいです。思ったことは、なんでもできます。「私はこうだからできない」「ああだからダメなんじゃないか」ではなく、「なんでもできる!」って思うといいですよ。

白石 亘(しらいし・わたる)さん
豊田通商株式会社
豊通インシュアランスマネジメント株式会社
東京グローバル営業部 プロジェクト開発グループ プロジェクトリーダー
1980年、石川県生まれ。中央大学商学部商業・貿易学科に入学し、在学中にサンケイリビング新聞社と個人業務委託契約を結んで広告営業として個人事業主になる。2003年に卒業し、急成長中であったベンチャー企業、エン・ジャパン株式会社に入社。新規営業に勤しんだ。2004年、豊田通商株式会社(旧株式会社トーメン)に途中入社。数々の事業を立ち上げ、拡大に成功し、2011~2013年にインド、インドネシアを中心にアジアメディカル事業の新規事業開発に尽力する。2014年より豊田通商グループの保険部門、豊通インシュアランスマネジメント株式会社に出向し、ミャンマー保険市場への新規参入を行っている。