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松永 理生さん

松永 理生さん【略歴

大学、全日本、世界のトップ目指す

松永 理生さん/商学部卒 バレーボール部監督

 お家芸、バレーボールの中大が復活した。関東大学(所属12校)春季リーグを2連覇。今春は負けなしの完全制覇だった。昨年12月には全日本大学選手権大会(インカレ)で18年ぶりの優勝。指導者で中大OBの松永理生監督(33)が6月9日、東京・中大駿河台記念館で講演した。

 演題は『名門復活への道』。講演会の主催は白門三九会(中大学員会支部、白石紀一会長)。身長190cmの松永監督が登壇すると、聴講者は顔を上げる。バレーボールは高さの競技と再認識する。全日本代表としてプレーした松永氏も1時間近い講演は初めてとあって、やや緊張していた。

「バレーボールにはタイムアウトが2回あります。詰まったらタイムを取らせていただきます」。「気楽に!自分の家と思ってください」。客席とのこんなやりとりで座は一気に和んだ。

選手と向き合う

 2012年4月に中大監督に就任した。中大バレーボール部監督は代々、企業チームから出向されている。

「手探り状態でしたので、本を買いました。『チームの心を一つにする技術』=村田祐造著、日本実業出版社=。僕は選手と向き合うことをテーマにしました。選手をいかに高いレベルでプレーさせるか。キーワードは夢と共存です」

 キャンパスに集う学生に夢は何? と尋ねると「卒業する」「就職する」との答えが多い。現実的ではあるが、夢の持つイメージとはほど遠い。

「僕は選手に夢を持ってもらいたかった。例えば、国内トップリーグの8チームに入る、全日本代表になる。学生に高い目標を持ってもらいたい。そのためには選手視線になり、選手の声をしっかり聞く。上からモノを言うのではなく、大人・社会人という壁を取り除き、選手と何でも話し合える信頼関係を作る。就任1~2年目はなかなか難しく、強い口調になったこともあります。体罰はタブーの時代。叱るときも考えながら言いました」

「中央大学には自主性のいい伝統があります。選手は監督不在のとき、自分たちで考える。勝つためには何をどうしたらいいか。そして彼らは練習の雰囲気を自分たちで作るためによく声を出しています。そんな大声出さんでもいいよ、というくらい。練習試合では体育館の隣の部会から“うるさい“と、たしなめられたこともあります。他の選手もそうですが、とくに石川(祐希選手)は試合中、ずっとしゃべっています。自立しようとしていることが伝わってきます」

石川選手獲りへ

 石川選手は19歳の大学2年生ながら、全日本代表メンバーとして世界を相手にプレーしている。愛知・星城高時代に史上初の2年連続3冠(インタハイ、国体、春高バレー)達成のエースだ。松永氏は名門復活に石川選手獲得(勧誘)に乗り出した。

「彼が2年のときからチームは公式戦99戦99勝。スーパースターが中大に入れば名門復活はなると信じていました」「高校の監督には石川君がどうしているか、いつも聞いていました。接触はできない。彼の歩く道に立って顔だけ、にゅーっと出している。『あのひと、誰?』と思ってもらえばいい。3年生になって初めて会うことが許された。『やっと会えたね』と言うと、石川がニカッと笑いました」

 手ごたえをつかんだ。以来会うたびに、目指すバレーのビジョンを熱く語った。話すだけではなくデータ化し、映像化して、1回あたり約2時間、石川選手を軸とした明日のバレーをアピールした。

「高校の監督が、『また会いたいと言っています』と連絡をくれました。今度はご両親が同席するという。『来たっ!』。こちらも中大の名トレーナー、菊池加奈子さんに同行をお願いしました。石川に、今後必要なのはトレーニングだ、と言いたかった。菊池さんには僕らが学生のころから面倒をみてもらっています。全日本にいた福澤達哉選手(29)もそうでした」

 菊池トレーナーは中大に15年ほど前から在籍。独自のトレーニングで福澤選手の最高到達点を伸ばした。3m40cmだったのを3m55cmへ。松永監督も学生時代、3m35cmから3m45cmに押し上げた。ネットの高さが2m43cm。10~15cm高くなるのは大きな武器だ。

「彼は菊池さんが話すトレーニングに興味を示しました。僕はこれから全日本で、世界で戦おうと訴えました。中大進学が決まって、安心しました。僕の初めてのスカウト、涙はさすがに押し殺しましたが、感動ものの出来ごとでした。入学後、懸垂をさせたら1回しかできない。ぶら下がっているだけ。筋力がなかった。ここから彼のトレーニングの始まりです」

 現在、石川選手の最高到達点は全日本レベルの3m48cm。名トレーナーのもと、体力増強、筋力トレーニング、けがをしない体づくりに励む。入学後、関東大学春季リーグ戦に2年連続優勝、インカレ制覇の中心に石川選手がいた。下級生にはU23(23歳以下)、全日本選抜ユース・ジュニアらの伸び盛りが顔をそろえる。

打倒!トップチーム

「今後の目標は大学日本一連覇、大学の年間4大会(春季、東日本、秋季、インカレ)の4冠達成、そして国内トップリーグのチームに勝つことです。ハードルは高いですが、常勝チームへ一歩ずつ近づいています」

 中大は天皇杯全日本選手権優勝6回、うち1965年からの5連覇が光る。ネットを挟み、現役学生と中大OBが覇権をかけて戦った。日本のバレーを中大が支えていた。

「指導者としては世界で戦える選手を育てたい。石川がイタリアのプロチーム、モデナから誘われたのは日本人で初めて。学業を優先して短期留学となりましたが、いずれ世界で羽ばたくでしょう。数多くの選手が世界へ出ていけば、強い日本が復活します。目標に向かって精いっぱい頑張ります」

 バレーボール部OBらによると、試合会場へ行って応援してくれるのがイチバンうれしいという。

松永 理生(まつなが・りお)さん
中大商学部卒。2004年4月~07年パナソニック、07年10月、豊田合成(本社・愛知県)。05 ~06年全日本代表。12年4月から中大へ出向となり監督就任。33歳。京都府出身。