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佐佐木 由美子さん

佐佐木 由美子さん【略歴

多様な働き方が選択できる社会へ

佐佐木 由美子さん/社会保険労務士・グレース・パートナーズ株式会社代表取締役

心に芽生えた問題意識

 物心つく頃から、「どうもおかしい」と感じていたことがありました。それは、女性と男性は平等と言いつつ、実際にはそうではないのでは?という問題意識です。

 社会を見回しても、要職についているのは男性で、仕事で活躍している女性といえば、学校の先生やお医者さんくらいしか思い当たりませんでした。

 早熟だった私は、早く大人になって自由になりたいと思い、そのためには何かしらの職業で身を立て、経済的に自立しなければならないと思っていました。

 そして、いつしか「女性が自分らしく自由に生きられる社会になれたら…」というビジョンを思い描くようになり、微力ながら私もそのために何かできればと考えるようになりました。

 紆余曲折を経て、社会保険労務士の国家試験を受けようと思ったのも、その想いを実現するのに役立つのではないかと思ったからです。

女性の雇用問題に取り組む

 2005年に開業(翌年、法人も設立)以来、主として中小・ベンチャー企業の人事労務管理に携って参りました。大企業と比べて、女性の雇用管理が進んでいない現状を何とかしたいという思いもありましたし、経営者と近い距離感で雇用環境の改善に向けて取り組んでいくことに、やりがいを感じたからです。

 当時は、「マタハラ」という言葉もなく、妊娠したら退職することは珍しくありませんでした。まず着手したのは、女性が妊娠・出産後も働き続けられる雇用環境を整備し、休業中の生活保障として育児休業給付等を受けられるように支援することでした。

 せっかく育てた女性社員を出産で失うことは、企業にとっても損失です。以前は産休中の社会保険料免除がなく、コスト負担や人材不足等を理由に難色を示す経営者に説明をして回りました。

 また、「職場に迷惑をかけたくない」と退職を考える女性たちに、社会保障制度や給付金のことなど説明し、「辞めたらもったいない。今は自信がなくても、仕事を続けてみたら」と諦めないように言い続けました。

 育児・介護休業法や雇用保険法等、様々な法律改正もあって、まだ課題はあるものの、ここ数年でだいぶ女性を取り巻く雇用環境は改善されていると感じます。

「働き方改革」からダイバーシティ経営へ

 将来の日本の人口構造に目を向けると、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少は避けられません。高度成長期のように人口が増大している人口ボーナス期であれば、マーケットも大きくなりGDPも増えますが、人口オーナス期に入れば日本経済はますます厳しさを増します。

 そこで、昨今は国を挙げて「働き方改革」が叫ばれています。従来の日本型雇用システムでは、終身雇用を前提とした転勤や長時間労働も厭わない男性正社員が主体となった労働モデルでしたが、それでは育児や介護等と仕事の両立は難しく、女性の就業機会が広がりません。

 「女性活躍」というと、女性の管理職比率を高めるなど、女性に対する施策を打ち出すことを考えがちですが、結局のところ主流の労働モデルとされてきた男性の働き方を見直さなければ何も変わりません。

 今後はグローバル化により外国人も増えますし、障がいを持つ方や超高齢化社会にあってシニア労働者も増え、働き手もさらに多様化していきます。人材活用戦略として、ダイバーシティ経営を推進していくことが求められていくのではないでしょうか。

 私たちが生産性を高めて持続的に働いていくためには、性別にかかわらず、個々の事情に応じて多様な働き方を選択できる社会になることが大切だと考えます。

 「働き方改革」がその契機となって、個々の企業や社会全体の意識を変えていくことにつながることを期待していますし、弊社としても柔軟で多様な働き方を可能とする企業がさらに広がっていくように、活動を行って参りたいと思っています。

ライフワークへの取り組み

 こうした業務の一方で、働く女性のための情報共有サロン(サロン・ド・グレース)を主宰しています。働くうえで大切な法律や制度のことなど、一度働き始めると、誰も教えてはくれません。しかし、知らないばかりに、職場で不利益を被ってしまったり、人生の選択肢を狭めてしまったり…と、悩みを抱える女性たちは数多くいます。

 そこで、今後のキャリアや働き方、職場での悩みなどを相談でき、また学校や会社では教えてくれない生きた知識を学び、情報を共有する場としてサロン・ド・グレースを立ち上げました。

 これまでたくさんの女性にご参加いただき、いろいろな悩みを分かち合って参りました。仕事と育児の両立、転職、副業・兼業、人事異動、ハラスメント、労働契約、社会保険に関すること…等々、実に様々なテーマが話題にのぼります。

 時に、法的なアドバイスもさせていただきながら、参加者同士の意見も飛び交い、一人ひとりが自分の未来を真剣に考えています。ぜひ多くの方に、サロンを活用していただきたく、自分らしく生きるための一歩を踏み出せる場となれば、私自身も大変嬉しく思います。

 Salon de Grace(サロン・ド・グレース)new window

 現在、サロンには社会人の方しか参加されませんが、学生のうちから実践的なワークルールや社会保障制度に関する知識を得ておくことは、自分自身の身を守りながら、将来を切り拓いていくうえで大切ではないかと感じています。

 今後、実業と合わせてこうしたライフワークに取り組みながら、枠にとらわれず活動の幅を広げていけるように精進して参りたいと思います。

佐佐木 由美子(ささき・ゆみこ)さん
人事労務コンサルタント・社会保険労務士 中央大学大学院戦略経営研究科修了、MBA取得。グレース・パートナーズ株式会社代表取締役、グレース・パートナーズ社労士事務所代表new window
米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。2005年3月に現「グレース・パートナーズ社労士事務所」を開業、翌年グレース・パートナーズ株式会社を設立。中小・ベンチャー企業を中心に、多様な働き方や人事労務管理等をサポートし、親身なコンサルティングで多くのクライアントから支持を得ている。著書に「採用と雇用するときの労務管理と社会保険手続きがまるごとわかる本」(ソーテック社)等をはじめ、メディア連載に東洋経済ONLINE「ご存じですか?あなたの会社のワークルール」new window、日経WOMAN ONLINE「職場で賢く生き抜く!ワークルールとお金の話」new windowがある。