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松井 知己

松井 知己 【略歴

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Jリーグの試合スケジュールはどうやって作っているのか?

松井 知己/中央大学理工学部教授
専門分野 社会システム工学

スポーツ・スケジューリング

 スポーツ観戦はお好きですか? 今日ご紹介するスポーツスケジューリングは、スポーツの試合日程表を作る問題の総称です。以下、スポーツスケジューリングについて簡単にご紹介しましょう。

 毎年シーズンの初めに、各スポーツの試合日程が発表されます。分かり易いサッカー(Jリーグ)の例を考えましょう。J1リーグの試合は、全てのチーム対が2回ずつ戦う二重総当たり戦になっています。現在J1には18チームが所属していますので、各チームは自分以外の17チームと2回ずつ、2×17=34節からなるスケジュールを戦います。

図1 チーム数6のスケジュール

図1 チーム数6のスケジュール

 18チームではちょっと多いので、例えば6チームの、前半戦のスケジュール例を見てみましょう(図1)。図の各行はチームに対応し、行内の文字は各節ごとの対戦相手を表しています。図1のスケジュールでは、チームAは一節にチームCと対戦し、以下チームD、E、F、Bの順序で試合を行っています。

 よく見ると、各チームは毎節どこかのチームと戦っています。Jリーグでも、各チームは34試合を戦いますが、すべての試合はちゃんと34節に収まっていますね。これ不思議だと思いませんか? 毎節どのチームも試合があって、お休みが無く、ちゃんと34節に全部の試合が収まっています。こんなスケジュールをどうやって作るのでしょう?

図2 チーム数6のスケジュール失敗

図2 チーム数6のスケジュール失敗

 「適当にやればできる?」。いえいえ、それは大間違いです。一節から適当に作ってみると、最後の節の方で、34節に全部の試合がどうしても収まらなくなってしまうことがあります。6チームでさえ、図2のように適当に埋めると、あと六試合を第四、五節に収めることが実はできません。なかなかよくできたパズルのようです。実はチーム数が偶数ならば、スケジュールが絶対作れることがKirkmanという数学者によって1847年に指摘されています。こんな身近なところに実は数学が隠れています。

ホームゲームとアウェイゲーム

 Jリーグの試合は、対戦する二チームのどちらかのホームグラウンドで行います。そのため、相手チームのグラウンドで戦うアウェイゲームと、自チームのグラウンドで戦うホームゲームがあります。(通常)どのチームもアウェイを好みません。アウェイを戦う回数はどのチームも同じですから、それについては公平ですが、ホームやアウェイの連続についてはどうでしょう? 表1にJリーグとセリエAの例を挙げましょう。Hがホーム、Aがアウェイを表します。Hの連続またはAの連続(ブレークと呼ばれます、表中に下線で示しました)の個数の合計が各行の最後に書いてあります。浦和はHの連続が2回、Aの連続が2回(Aの三連続の中にAの二連続が二回あると数えます)計四回のブレークを持ち、他のチームとバランスが取れていません。これに比べるとセリエAのスケジュールは、チーム間のバランスが取れているように見えます。

 HやAの連続がチーム間でバランスの取れたスケジュールを作るとなると、かなり難しいパズルとなってくる事が分かっていただけるでしょうか。

コンピュータでスケジュールを作る

 この数年、スポーツの試合日程をコンピュータを使って作成する事が増えてきたようです。その理由として、スポーツがビッグビジネスとなったことがあるでしょう。アメリカメジャーリーグ(野球)では、アウェイの連続が少ないスケジュール作成と共に、TV放映権の販売先まで決める問題がコンピュータで解かれています。カーネギーメロン大学の教授率いるグループがこのスケジュール作成の仕事を獲得したことが2005年に話題になりました。

 日本のJリーグも、数年前よりコンピュータソフトを導入し、良いスケジュールが作成できるようになったようです。近年、日本のプロスポーツ界はマネージメント面において大きな転換期を迎えようとしています(数年前の球団買収騒動がいい例ですね)。今後数年間のうちに、スケジュール作成を含めた収益管理等について詳細が公開されるようになることは間違いないでしょう。皆さんも、贔屓のチームがスケジュールで損をしていないか確かめてみると、違った角度からスポーツ観戦を楽しむことができるかもしれません。

(提供:草のみどり第215号)

松井 知己(まつい・ともみ)/中央大学理工学部教授
専門分野 社会システム工学
1962年浜松生まれ。1985年東京工業大学工学部卒業。1987年東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。1990年東京工業大学大学院総合理工学研究科博士後期課程満期退学。博士(理学)。東京理科大学理工学部助手、東京大学工学部講師、東京大学大学院情報理工学系研究科助教授を経て、2006年より現職。現在の研究課題はオペレーションズ・リサーチ、組合せ最適化である。他にNHK幼児番組撮影協力等の仕事も行っている。著書に『オペレーションズ・リサーチ』(共著、朝倉出版、2004年)などがある。
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