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データを駆使して新たな価値を創出する
「デジタル人材」が日本の未来を拓く!


「デジタル人材」の不足が叫ばれる今、文部科学省が情報系の大学・学部の開設を支援したり、産業界でデジタル人材の育成に取り組んだり、さまざまな施策が推進されています。データ社会で求められるのはどのような人材か。第一線で活躍するデータサイエンティストの田邊祐馬氏に、これまでの学びや現在の仕事内容などについて聞きました。

経営学部からSEを経てデータサイエンティストに

 中学時代からプログラミングに興味があり、高校は理系クラスでした。ただ当時関心のあった経営を学ぶため経営学部に進学しました。組織論などアカデミックな科目を履修しながら「実践的なことに取り組みたい」「卒業後はシステムエンジニアになりたい」という思いで、独学でプログラミングを学んでいました。

 卒業後に就職したシステム会社では、市役所向けの水道料金システムの開発に携わりました。仕事をする中で、次第にデータ活用やAIに興味を持つようになったんです。もっと技術的な部分でキャリアを積みたいと、本屋やインターネットを活用して勉強していたところ、2017年ごろに出会ったのがディープラーニングでした。大量のデータを学習させることで、人間の脳のように自動的に特徴を抽出するディープラーニングの将来性に惹かれて、データサイエンス分野への転身を決めました。

シミュレーションを高速化する「サロゲートモデル」を開発

 村田製作所では「サロゲートモデル」を開発しています。サロゲートモデルとは、商品開発において計算に時間がかかる物理シミュレーションを機械学習で高速化する数理モデルです。従来は設計者の経験や勘に頼っていたところを、サロゲートモデルの導入により、属人性なく、お客様により良い商品をより早く届けられるようになります。自分が開発した技術が現場で使われ、業務効率化や品質向上につながっていることに大きなやりがいを感じています。

 現在データサイエンティストとして働いていますが、技術を駆使してデータを分析するだけでなく、事業部やお客様と連携し、会社や社会に貢献することが大切だと考えています。データサイエンティストに必須の資格はありませんが、高校・大学レベルの数学は、新しい技術を学び続けるための「基礎体力」としてあると良いでしょう。私は文系学部に進学したので、数学や物理の学習で遅れを取り戻さなければなりませんでしたが、学ぶこと自体を楽しめたので苦労したという感じはありません。

 昨年には会社の業務として、推薦技術※を競う「RecSys Challenge」という国際コンペティションに参加しました。また、個人的にも、データ分析プラットフォームである「Kaggle」のコンペで楽しみながら技術を高めています。単純に自分が好きな技術で会社に貢献できていることが、楽しく仕事ができている理由ではないでしょうか。今後は、個別技術を追求するという「点」から、会社全体を俯瞰(ふかん)し戦略を構想・実行するという「面」へと、役割をシフトしていきたいと考えています。
※ユーザーに最適な商品や情報を提案する技術

専門性を掛け合わせ「基礎体力」を養ってほしい

 デジタル分野で働く身として、生成AIなどの技術が指数関数的に成長しているのを肌で感じています。3年先がまったく予測できない状況です。これからのデジタル人材は、ツールを使うだけでなく、専門技術をどう生かすかをデザインする能力が重要になると思います。

 現在は、私が大学で学んだころに比べ、AIやデータサイエンスを学べる情報系の学部やプログラムが充実しています。例えば同じデジタル人材でも、プログラミングなどの基礎知識を持つ人材と持たない人材では生産性格差が広がってくるので、大学でしっかり基礎スキルを習得することが大切です。また、情報系の専門性と他分野の専門性を「掛け算」することによって、様々なキャリアが見えてきて、活躍のフィールドが広がっていくでしょう。例えば、情報と英語、情報と医療、情報とアートなどを掛け合わせることで、独自の価値を創造できます。これから大学進学を考えている皆さんには、ぜひ専門分野だけでなく、幅広い分野を学んでほしいと思います。遊びも大切にして、人格形成に役立ててください。大学で培った「基礎体力」は、社会に出てから、新しい技術を吸収し応用するのに必ず生きてくるはずです。

■Profile■
株式会社村田製作所 情報システム統括部 データ戦略推進部 データサイエンティスト

田邊 祐馬(たなべ ゆうま)氏
京都府出身。2012年3月神戸大学経営学部卒業後、システム会社で市役所向けのシステムの導入・開発を担当。その後、データサイエンス派遣会社を経て、19年から村田製作所で製造業におけるデータサイエンティストとしてキャリアを積んでいる。登録者数約3000万人(※1)の世界最大級のデータ分析プラットフォームであるKaggleにおいて、世界で約400人(※2)しかいないGrandmasterの称号を持つ。
※1・※2 2026年2月現在

Column
増加するデータサイエンス・情報系学部
しっかり「中身」を調べることが重要

 経済産業省の予測では、2030年には日本でIT人材が最大79万人不足する見込みです。IT人材へのニーズが高まる中、「データサイエンス」や「情報」と名の付く学部・学科がこれまで以上に増えています。

 しかし一口に情報系といっても、数理科学やデータサイエンスだけでなく、ビジネスからメディア、コミュニケーション、デザインまで、学問分野は幅広く、大学によって学べる分野は異なります。また、どの学部に所属していても学べる共通プログラムとして準備している大学もあります。情報系学部への進学を考えるなら、そこで学べる内容をしっかり知ることが大切です。

■大学・高専機能強化支援事業(支援1:学部再編等による特定成長分野への転換等)選定結果
 文部科学省「大学・高専機能強化支援事業」の「支援1:学部再編等による特定成長分野への転換等」には、初回公募で67件、第2回で59件、第3回で27件が選定されました。選定大学が新設・定員増を行うことによって、データサイエンス・情報系学部が急激に拡大しています。