日本マクドナルド株式会社(以下、日本マクドナルド)は1971年、東京・銀座に第1号店を開業した。それから半世紀あまりを経た現在、全国に約3000店舗を展開している。店舗の景観は街の日常風景に溶け込み、身近さとお馴染みの味わいで幅広い世代に親しまれている。
国内のマクドナルド店舗の約78%(2026年6月時点)は、フランチャイズオーナーによって運営されている。日本マクドナルド本部が事業の仕組みやマーケティング戦略を描き、それを地域の暮らしやお客様をよく知るオーナーが、それぞれのコミュニティの中で形にしていくことで、全国どこでも変わらないマクドナルドらしさと、その街ならではの温かさが生まれる。
こうしたマクドナルドの地域に寄り添った取り組みを、「地域とともに歩む、3つのストーリー」と題して、3回シリーズで紹介する。第1回は、岐阜県大垣市を中心に11店舗を運営するフランチャイズのオーナーオペレーターである清水資弘氏(株式会社スプリングウォーター)と、東海・北陸地方および北海道などのエリアを統括する日本マクドナルド 執行役員中日本地区本部長の西村美子氏に「店舗体験」をテーマに話を聞いた。ここでいう店舗体験とは、お客様が店舗で接する商品やサービス、店舗環境を通じて得る体験価値を指す。
おいしさ、サービス、快適さ、すべてを高いレベルで
マクドナルドが創業以来、一貫して大切にしてきた考え方に「QSC&V」がある。Quality、Service、Cleanliness、Valueの頭文字の略で、商品のおいしさ、スピーディーで行き届いたサービス、清潔で心地よい環境、価格を上回る価値を意味する。
「QSC&Vはどれか一つが秀でていればよいものではありません。すべてを高い水準で実現することで、お客様の店舗体験を向上させることを目指しています」と西村本部長は語る。
この考え方は現場にも浸透している。清水オーナーは「最初にクルー(従業員)に教える基本がQSC&Vです。どんなにいいサービスやきれいな店舗であっても、ハンバーガーが冷めていてはお客様が感じるバリューは下がってしまう。おいしくて温かい商品、すばらしい接客、きれいなお店、すべてを高いレベルで実践してこそ、マクドナルドらしい店舗体験を提供できると伝えています」と説明する。
マクドナルドでは、お客様だけでなく、クルーの「店舗体験」も重視している。西村本部長は「自分がしてほしいことを提供することをゴールデンルール、お客様が求めていることを察して提供することをプラチナルールと呼びますが、こうしたサービスはクルー自身が大切にされていると実感できる環境でこそ生まれるもの。クルーの店舗体験の充実が、お客様の店舗体験の向上につながる。クルーが働きやすい環境を整えることにも力を入れています」と教えてくれた。
「社員とのコミュニケーションをすごく大事にしています」と清水オーナーも話す。「社員とのコミュニケーションを通じて多くのクルーが相手の立場に立って丁寧に伝えるということを徹底しています」。
お客様とクルーの「店舗体験」を向上させるアクション
優れた店舗体験には、お客様と接する「人」の存在が欠かせない。そこには、クルーを大切にするマクドナルドの姿勢がある。同時に日本マクドナルドは、お客様の導線に配慮した店舗レイアウト、クルーが働きやすいキッチンレイアウトや調理設備の更新など、お客様の快適性とクルーの業務効率を高めるため、店舗の改装(リモデル)にも積極的に取り組んでいる。こうした店舗体験の向上に向けた投資は、中期経営計画においても重点施策の一つに位置付けられている。
清水オーナーは「古くなった店舗をきれいにすることがゴールではなく、クルーの使いやすさや店舗の生産性を高めることも目的」と説明。西村本部長は「店舗改装は、お客様とクルーの店舗体験を向上させるアクションの一つ」と位置付ける。
近年の店舗改装の中心は、デジタル技術を活用した注文システムの導入で、ほとんどの店舗にモバイルオーダーやタッチパネル式注文端末などが導入されている。お客様にとって注文方法の選択肢が増え、利便性が高まるだけでなく、店舗では注文対応業務の効率化が進む。
「注文業務にデジタルが導入されたことで、お客様とクルーが接する機会も広がりました。タッチパネルで注文したお客様にお席で待っていただき、クルーが商品をお届けするスタイルが主流になっています。そこで生まれるお客様との接点こそ、プラチナルールやゴールデンルールを実践する機会だと考えています」と清水オーナーは話す。
地域とのつながり育み、街に親しまれるマクドナルドに
マクドナルドのお客様の多くは地域の方々で、クルーもまた地域に暮らす人たちだ。そのため、マクドナルドは地域とのつながりを重視し、フランチャイズオーナーはコミュニティの一員として、地域活動に力を入れている。
「清水オーナーは、『マックアドベンチャー』を積極的に行っていらっしゃいます」と西村本部長が教えてくれた。マックアドベンチャーとは、子供たちが、マクドナルドのユニフォームを着てハンバーガーを作ることができる職業体験プログラム。「近隣県を含めて比較的早くに始めたこともあって、開始当初から、多くのご家族に参加いただきました」と清水オーナーは振り返る。
大好きなマクドナルドのハンバーガーを自分で作る体験は、子どもたちにとって忘れられない思い出になる。このほか清水オーナーは、保育園や学校などで食の安全や交通安全教室を行う活動や、地元の学童野球大会への協賛などにも取り組んでいる。こうした活動を積み重ねることで、マクドナルドは地域の人々にとってより身近な存在となり、「みんな、子どもの頃からどこにあるか知っている」と清水オーナーが語るように、暮らしの中に根付いた存在になっている。
※ 一部の店舗のみで実施しているサービス。
ブランド力と現場の実行力で、選ばれ続ける店舗へ
マクドナルドには2年に一度、優れた業績をあげたフランチャイズオーナーを表彰するゴールデン・アーチ・アワードがある。マクドナルドが実施する世界規模の表彰制度で、世界中のオーナーのうち上位1%のみが受賞できる栄誉ある賞。清水オーナーは2026年に日本国内で受賞した3人のうちの1人だ。清水オーナーは「これまでの受賞者はすばらしいオーナーばかり。びっくりしたという感想以外ない」と言うが、西村本部長は「地域に寄り添い、人を大事にしながら育て、事業を広げてきたことへの評価で、フランチャイズオーナーのロールモデル」と語る。
子どもの頃、銀座の1号店で「こんなにおいしいものがあるのか」と感動して以来、マクドナルドのファンだという清水オーナー。「マクドナルドというのは圧倒的な看板。その強みを生かして、お客様に『このマクドナルド、いいよね』と言っていただけるような店舗づくりをしていきたい」と抱負を語った。
「マクドナルドの真価は現場の力にある。どんなに優れたマーケティング施策でも、現場の実行力がなければうまくいきません」と西村本部長は答え、「すべてのお客様に選ばれるリーディングカンパニーであり続けることがマクドナルドの目指すところです。フランチャイズオーナーと連携しながら、時代の変化やお客様のニーズに応じた店舗体験の向上に、これからも取り組んでいきます」と力を込めた。