日本マクドナルド株式会社(以下、日本マクドナルド)は、全国に約3000店舗を展開している。その事業の特徴は、地域に根差したフランチャイズビジネスにあり、国内店舗の約78%(2026年6月時点)がフランチャイズオーナーによって運営されている。日本マクドナルド本部が事業の仕組みやマーケティング戦略を描き、それを地域の暮らしやお客様をよく知るオーナーが、各々のコミュニティの中で形にしていくことで、全国どこでも変わらないマクドナルドらしさと、その街ならではの温かさが生まれる。
マクドナルドの地域に寄り添った取り組みを3回シリーズで紹介する「地域とともに歩む、3つのストーリー」。第2回は青森県八戸市を中心とした県東部で10店舗を運営するフランチャイズのオーナーオペレーターである築舘智大氏(有限会社トムセカンド)と、東北・関東地方(神奈川県の一部を除く)などのエリアを統括する日本マクドナルド 執行役員東日本地区本部長の坂下昌嗣氏に、人と人とのつながりを育む、マクドナルドの「おもてなし」をテーマに話を聞いた。
創業以来、受け継がれる経営理念「ピープルビジネス」
「マクドナルドは、ハンバーガービジネスではない。ハンバーガーを売るピープルビジネスだ」。創業以来、マクドナルドの経営理念として脈々と受け継がれている、創業者、レイ・A・クロックの言葉だ。
坂下本部長は、「お客様におもてなしを提供するのも人、商品を作っているのも人です。マクドナルドの価値は、人と人とが協力し合うことで生まれます。私たちは単にハンバーガーを売っているのではなく、人、つまりクルー(従業員)を中心に据えたビジネスを展開していると考えています」とその意味を説明してくれた。
築舘オーナーも「近江商人の経営哲学として有名な『三方良し』は『売り手良し、買い手良し、世間良し』ですが、これに『人』を加えた『四方良し』をモットーにしています。クルーを育てることを通じて、お客様に最高のサービスを提供することを目指しています」と語る。
お客様が求めることを察して、心が通う接客を
日本マクドナルドではどのようにクルーを育て、おもてなしを実践しているのか。坂下本部長は「一定のおもてなしのスタンダードはマニュアルに定められていますが、そこにクルーがどう自分らしさを積み重ねるか。お客様のニーズは千差万別で、柔軟に対応しながらサービスを提供することが重要です」と語る。
そのためには「お客様が今、何を求めているかを一生懸命に考えることが大切」と築舘オーナーは力を込める。「お客様には店舗で快適に過ごしていただきたい。空調やBGMの音量は気にならないか、テーブルに邪魔なモノはないかなど、お客様の様子から察して適切に対応できるようにとクルーに伝えています。会話も大切です。『今日は暑いですね』といった声掛けを通じて、心が通うおもてなしに努めています」。
日本マクドナルドでは現在、ほとんどの店舗にモバイルオーダーやタッチパネル式注文端末が導入され、クルーが商品をテーブルまで届けるテーブルサービスも利用が広がっており、その接点を通じたお客様とのコミュニケーションを重視しているが、築舘オーナーは以前からそうしたおもてなしを心がけてきた。築舘オーナーの店舗は、アンケートに基づくお客様満足度の指標で長年、全国トップレベルを維持している。
シリーズ第1回で話を聞いた岐阜県大垣市の清水資弘オーナーと同様、築舘オーナーも、マクドナルドが2年に1度、優れた業績をあげたフランチャイズオーナーを表彰するゴールデン・アーチ・アワードを2026年に受賞した。世界中のオーナーの上位1%のみが受賞できる栄誉ある賞で、日本国内で受賞した3人のうちの1人だ。築舘オーナーは「早くからおもてなしを実践してきたことを評価していただいたのかな」と感想を述べ、坂下本部長は「その姿勢を間近で見てきました。今回の受賞は、築舘オーナーが長年積み重ねてこられたおもてなしへの取り組みが高く評価されたもので、私自身も大変うれしく思っています」と喜びを語る。
地域に密着、小学生アイスホッケー大会を支援
「マクドナルド杯争奪 青森県ちびっこアイスホッケー大会」
日本マクドナルドは地域貢献活動にも力を入れている。築舘オーナーの言葉では「世間よし」にあたる部分だ。「おいしさだけでなく、ハッピーな時間を地域の方々に提供することは、われわれの存在意義です」と坂下本部長。実際に築舘オーナーは、高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会 マクドナルド・トーナメントに出場する地元の野球チームや地元の学童野球大会をサポートするほか、2003年から小学生のアイスホッケー大会を協賛している。「氷都」と呼ばれる八戸を拠点にするフランチャイズオーナーならではの取り組みだ。店舗周辺の清掃活動「クリーンパトロール」も継続的に行っている。
さらに坂下本部長が「築舘オーナーはロータリークラブの会員として地域コミュニティの活動もされています」と教えてくれた。「地元企業の社長さんなどから事業について学びたいと思ったのが入会のきっかけ」と築舘オーナー。もともと青森県出身で地域に知人が多いが、その活動を通じてさらに人脈が広がった。坂下本部長は「店舗で打ち合わせをしていると、『築舘オーナー!』と声をかけられている場面をよく目にします。地元の方々に愛されていることを実感するとともに、地域に密着した経営をされていると大変感銘を受けています」と話す。
おもてなしに終わりはない、さらなる成長を目指して
日本マクドナルド本部とフランチャイズオーナーが対等の立場で連携することが、フランチャイズビジネスを支える基盤だ。築舘オーナーは「私たちは接客の最前線に立ち、お客様の声、表情、雰囲気をよく知っています。そこで得た気づきを本部に伝えることが大切です」と話す。これに対して坂下本部長は「フランチャイズオーナーの皆様から寄せられる現場の意見は貴重です。その意見を経営の意思決定に生かすことが、日本マクドナルドのさらなる発展につながると考えています」と応じる。国内随一のレストランブランドを支える舞台裏の一端が垣間見えるやりとりだ。
「どうすればお客様に喜んでいただけるかを考え、地道に取り組みを積み重ねてきました」と築舘オーナー。「形があるものは模倣できるが、形のないものは模倣できない。おもてなしを高めていくことでお客様に一番に選んでいただけるブランドになりたいと考えている。おもてなしに終わりはありません。これまで以上にお客様満足の向上に努めていきたい」と抱負を語った。坂下本部長は「おもてなし、クルーの成長、ピープルの力といった形のないものを実践するのは容易なことではありません。その難しさと向き合いながら、お客様から一番に選んでいただける存在であり続けることを目指していきたいと思います」と力強く語った。