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読売EXPOフォーラム2025 ~大阪・関西万博が残したレガシーとは~<前編>

読売新聞全国版朝刊

PR 万博 宮田裕章

184日間にわたって開催された2025年大阪・関西万博には国内外から大勢の来場者が訪れ、様々な出会いや交流、感動を残しました。158か国・地域の文化、最新のテクノロジー、価値観を未来に向けてどのように活用していくのか。閉幕直後の感動と興奮の冷めやらぬ10月14日、「読売EXPOフォーラム2025〜大阪・関西万博が残したレガシーとは」が大阪市のオービックホールで開かれ、パビリオンのプロデューサーや協賛企業の関係者らが集い、それぞれが感じた「万博のレガシー(遺産)」について語り合いました。

※登壇者の所属・肩書は、イベント時のものです。

 

【トークセッション】 万博からつながる、この先の未来 〜PASONA NATUREVERSE〜

■慶応義塾大学医学部教授/大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー 宮田 裕章氏
1978年生まれ。専門はデータサイエンス、科学方法論、Value Co-Creation。データサイエンスなどの科学を駆使して社会変革に挑戦し、現実をより良くするための貢献を軸に研究活動を行う。専門医制度と連携し5000病院が参加するNational Clinical Database、LINEと厚労省の新型コロナ全国調査など、医学領域以外も含む様々な実践に取り組むと同時に、世界経済フォーラムなどの様々なステークホルダーと連携して、新しい社会ビジョンを描く。宮田が共創する社会ビジョンの1つは、いのちを響き合わせて多様な社会を創り、その世界を共に体験する中で一人ひとりが輝くという“共鳴する社会”である。

■パソナグループ代表取締役会長CEO 若本 博隆氏
1984年、株式会社埼玉銀行(現株式会社りそな銀行、株式会社埼玉りそな銀行)入行。1989年、株式会社テンポラリーセンターに入社し、営業・人事・新規事業開発・経営企画などの責任者を歴任。2007年に株式会社パソナグループ 取締役常務執行役員に就任。2012年に取締役専務執行役員、2017年に取締役副社長執行役員、2021年には取締役副社長執行役員COO 経営企画本部長兼成長戦略本部長に就任し、これまで数々のM&Aを推進。2025年6月に代表取締役社長CEOに就任し、8月より現職。

■読売テレビ 佐藤 佳奈 アナウンサー<コーディネーター>

(左から)若本 博隆 氏 宮田 裕章 氏

「ありがとう」人々が心でつながる感動の舞台

多様であり一つ

佐藤
まずは万博の振り返りからお願いします。
若本
弊社が展開した「いのち、ありがとう」をコンセプトにしたパビリオン「PASONA NATUREVERSE」では、パソナグループが目指す「人と自然とテクノロジーが共生し、人々が思いやりの心でつながる、真に豊かな世界」を表現し、発信してきました。「身体の健康」「心の健康」そして「社会的な健康」を実現する「ウェルビーイングな社会」を目指すというグループのビジョンを、「からだ」「こころ」「きずな」という三つのテーマに分けて紹介。iPS心臓や心筋シートの展示、キューブ型スクリーンを使った映像ショーが非常に好評で、期間中215万人の方々にお越しいただきました。
宮田
万博は大成功だったと改めて感じています。関係者を含め2800万人以上が来場し、その8割以上の方々が、期待以上だったと答えてくださっています。会場では、大屋根リングと「静けさの森」が、とても重要な存在になったと思います。世界各国のパビリオンが異なるまま共存する中で、一つの空を見上げることのできる大屋根リングは、いつの間にか万博のテーマとなっていた「多様であり一つ」を象徴する強力な舞台装置になりました。一方、お祭りの場所だけだと、その体験は泡のように消えてしまいます。そこで対になるものとして置いたのが「静けさの森」です。万博での体験を静かに振り返り、自らの血肉としてもらうための場。動と静の共鳴の中で、異なるままに響き合わせていくための場として「静けさの森」がありました。
佐藤
たしかに、「多様であり一つ」という言葉で、「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマの解像度が上がったような感じがします。
宮田
閉会式でもみんな「多様であり一つ」と言っていましたよね(笑)。個性を出したパビリオンと、テーマウィークなどの仕掛けを通すことで、来場者の方々には非常に高いレベルで満足していただけました。何が良かったかを聞くと、「未来は一つではなく、多様に広がるものだと感じた」「自分の未来を考えるきっかけになった」という声がありました。まさに一人ひとりが自分の未来を見つけてくださったということであり、今回の万博の一番のレガシーだと思います。
淡路島への移設が決まった「PASONA NATUREVERSE」

万博に来られなかった人にも発信

佐藤
どのパビリオンも大屋根リングも、学びながらすごくワクワクして本当に楽しめるものでした。閉幕してなくなってしまうのは惜しいなと思って
いたのですが、「PASONA NATUREVERSE」は淡路島に移設されるそうですね。
若本
建物を使い続けるということも最高のサステナビリティーですから、できるだけ今の良さを生かせるようにしたいと思っています。会期中にお越しいただけなかった方々に向けても発信できるようなものにしたいです。
佐藤
楽しみです。〝もの〞以外にも未来につながるレガシーはありますか?
若本
三つあると考えています。一つは、万博の経験を通じて育った人材です。新たな場でも活躍してもらうため、就職イベントを開いたところ、107社の企業様がブースを出してくださり、2日間で2500人の方々にご来場いただきました。二つ目はアイデアです。多彩な人々が集まった万博では、〝化学反応〞から多くのアイデアが生まれました。それらを生かそうと開催したビジネスコンテストには約600人が参加して様々な提案を披露してくださり、また、農業と食を核とした豊かな国づくりについての議論も行いました。三つ目はネットワークです。パビリオンを出展したことで様々な企業・団体の方々と強いつながりができ、共創プロジェクトも生まれています。ウェルビーイングという大きなテーマに向けて一緒に歩める仲間、絆ができたことは、非常にありがたいレガシーだと考えています。
宮田
ウェルビーイングは、今回の万博において重要なテーマでした。SDGs(持続可能な開発目標)の中にも入っているテーマですが、私たちはその先を見据えています。実際、「健康・ウェルビーイング」というのは、従来の万博やイベントでは「医療」に偏りがちだったのですが、今回はパソナさんをはじめ大阪ヘルスケアパビリオンなどで「人が豊かに生きることで自然と健康になる、それがウェルビーイングだ」というアップデートが起こりました。もう
一つ象徴的だったものは「文化」です。SDGsに入っておらず、コロナ禍でも〝不要不急〞とされた文化ですが、生きがいを支えることが「いのちの輝き」につながることを考えると、すごく大事なものなのです。こういった取り組みそのものもレガシーとして入り始めているように思います。「静けさの森」は閉幕後も恒久的に残すことが決まりました。ぜひまた皆さんとこの森に集い、ウェルビーイングやNATUREVERSEについて語り、そこから淡路島ツアーに行くなどといった取り組みを行っていきたいです。

未来を感じた皆さんがレガシー

佐藤
最後に、万博を通して感じたこと、学びとなったことを教えてください。
若本
昨日、最後のお客様をお見送りしていた時、お子様たちから手づくりの万博シールをいただいたり、ハイタッチをしたりして、「ありがとう」「良かったよ」とたくさんおっしゃっていただきました。本当に感謝の気持ちでいっぱいになりました。「ありがとう」という言葉が響き合ったこの万博という場を通して、いろいろなことに感謝して生きていくことの大切さを改めて強く感じ、人々が思いやりの心でつながる真に豊かな世界を目指していこうと強く思いました。感動を共有できた、本当に素晴らしい舞台でした。
宮田
準備期間中はかなりバッシングを受けましたが、開幕してからは大阪、関西の皆さん、そして来場者の方々が、ポジティブに未来を感じる力で、いろいろなものを覆してくださいました。多様な未来を感じた皆さんこそレガシーであり、一人ひとりがこれから行う活動によって、その力を広げていくことが大切だと思います。
 

【トークセッション】 万博における学びとデザイン 〜遊びと創造性がつくる未来〜

■音楽家、数学研究者、STEAM教育家/大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー 中島 さち子 氏
(株)steAm 代表取締役、(一社)steAm BAND代表理事、大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー、内閣府STEM Girls Ambassador、東京大学大学院数理科学研究科特任研究員。国際数学オリンピック金メダリスト。資生堂クレ・ド・ポー ボーテより、STEAM分野(科学、技術、工学、芸術、数学)の教育に貢献した女性を表彰する「Power of Radiance Awards 2025」を受賞。音楽数学教育と共にアート&テクノロジーの研究も進める。

■立命館小学校教諭学校法人立命館起業事業化推進室教育開発統括 正頭 英和 氏
立命館小学校教諭。学校法人立命館 起業事業化推進室 教育開発統括。Minecraftを活用した授業が認められ、2019年のGlobal Teacher Prizeにおいて、世界150ヵ国以上、3万人のエントリーの中から、日本人小学校教員初となるTop10に選ばれ、「世界の優秀な教員10人」となる。その他には、桃鉄教育版のエデュテイメントプロデューサーなどもつとめている。主な著書に「世界トップティーチャーが教える子どもの未来が変わる英語の教科書(講談社)」などがある。

■VISIONs 代表取締役/クリエイティブディレクター・Co‐Futures Platform『COMMONs』代表 引地 耕太 氏
東京/福岡を拠点に活動。2025年株式会社VISIONsを設立。これまでに大阪・関西万博のデザインシステムをはじめ、万博夢洲会場のデザイン・アート・サウンドによるオープンデザインプロジェクト『EXPO WORLDs』をはじめ、東京五輪や大阪・関西万博といった国家プロジェクトから、NIKEやYANMARなど数々のグローバルブランドのクリエイティブ、スタートアップのデザイン戦略に至るまでその活動の幅を広げている。

(左から)引地 耕太 氏 正頭 英和 氏 中島 さち子 氏

社会全体で共有する開かれた場所と取り組み

遊びながらつくる 「創造性の民主化」

佐藤
万博での取り組みについて教えてください。
中島
「いのちを高める」をテーマにした「いのちの遊び場クラゲ館」は、開幕前から5年ぐらいをかけて、子どもから大人まで、障害のある人や海外の人も交え、たくさんの人と一緒につくってきたものです。私は、21世紀は「分断」が〝ごちゃ混ぜ〞になることで「共創」に生まれ直す時代だと思っています。遊びながらいろいろなものと出会い、いつの間にかつくっている。それが途中で別の誰かとつながり、一緒に何かをすることで更なる「つくる」や「遊び」が生まれる。「創造性の民主化」と言っているのですが、誰もが多様な自分らしい創造性を発揮できる社会の仕組みをつくりたいと考える中で生まれたのがクラゲ館です。触れたり音を出したりと、五感に訴える創造的な体験を提供するワークショップも270回ほど開きました。
引地
今回の万博では、参加と共創を促すプラットフォームとしての開かれたデザインを目指しました。公式ロゴから〝細胞〞の一つを切り出し、成長・進化するような「個のいのち」として〝ID〞と名付け、一貫性を持たせるためのガイドラインは置きつつ、その周辺に〝余白〞を設け、いろいろな人が参加できるようにしたのです。ネットで発信を続けていくうちにIDが「こみゃく」と呼ばれてムーブメントを起こし、様々な「こみゃく」たちのいのちが一気に広がっていきました。これがグッズなどにも展開されていったのが、今回のデザインシステムの面白いところでした。会場でも多彩なアーティストと装飾や音楽で共創でき、国家的プロジェクトと社会との間に〝共有地〞が生まれました。
正頭
「万博に行って何を学べるの?」というのは大人だけで、子どもはそんなことは言わないし、思いません。子どもが動く基準は、楽しいか、楽しくないかなんです。そこで楽しさを損なわずに学びを可視化できるように、万博への修学旅行では、〝調査団として会場を巡り、学んだことや気付いたことを学校に戻ってボスに報告する〞という設定のワークシートを制作しました。互いに見たものをシェアすることで、「また行ってみたいな」「あっちも面白そうだな」という感情が学校の中で生まれるようにしたのです。万博は非日常の体験で、子どもたちのやる気に火がつく要素がたくさんあったと思いますが、万博というものを教育にどう落とし込んでいくのかを考え、子どもたちに伝え、発信していくお手伝いができればと思っています。
クラゲ館の設計について語る中島氏(右から2人目)

子どもたちのやる気に火をつけた万博

佐藤
万博ではどんな経験が得られましたか?
中島
40を超える国とコラボレーションし、内閣官房の国際交流プログラムも使いながら、音楽やものづくりなどを行いました。子どもたちも、ただ話を聞いたりネットで調べたりするだけよりも、生身の人と一緒に踊ったり、友達になって遊んだりすることをとても楽しんでいました。対話も大事ですけれども、最初に五感を通した交流、遊びがあると、やっぱりすごく楽しいんですね。世界の文化を知ることで自国の文化や郷土への興味も増し、生きた学びができると思うので、ここで生まれた国際交流は何とか残していきたいと思っています。
正頭
子どものやる気に火がつくのは、人に出会った時、本を読んで感銘を受けた時、非日常の三つだと思っています。万博は子どもたちにとって完全な非日常で、やる気に火をつけてくれた体験でした。一方で、自分たちにとっての非日常は、それぞれの国では日常なんだという気付きにもなりました。はじめは「万博に行く」ことが目当てだったのに、「あの人に会いたい」と、〝人〞にフォーカスして何回も通う子が出てくるなど、非常に魅力的な取り組みになったと思っています。
佐藤
人というと、「こみゃく」がどんどんつながっていったところにも通じますか?
引地
そうですね。中島さんのおっしゃった「創造性の民主化」が、今回まさに花開いたように思います。通常、国家的プロジェクトのデザインはトップダウンでつくられるのですが、今回はSNS上で双方向のやり取りを重ねながら、有機的に文化が育っていくようなあり方を模索しました。個々の創造性を引き出したものがネット上で生まれると、インスピレーションを受けて二次創作、三次創作へとどんどん広がっていくんです。みんなでつくっていくという空気のあり方が非常に良くて、私も学ばせてもらいました。
五感に訴える創造的な体験を提供した「いのちの遊び場 クラゲ館」 © KURAGE Project & steAm, Inc.

国家と市民の「共有地」 今後もデザイン

佐藤
最後に、残したいレガシーを教えてください。
中島
ハード面もなるべく残したいと思っていますが、ソフトレガシーとしての人的交流の機会や、みんなが遊びながら何かをつくっていける開かれた場所をつないでいきたいと考えています。クラゲ館の移設にこだわらず、「クラゲられる場」をうまくつくれないかなと考えています。例えば今、山本能楽堂さんと組んで、子どもたちがお能を見るだけではなく、参加もできる取り組みをしているんです。そういう場や仕組みをもっとつくっていけたらと思っているので、ぜひ皆さんのお知恵をいただきたいです。
引地
公式と非公式、国家と市民の間に新しい共有地が生まれたのが、今回の万博の素晴らしいところでした。この共有地を閉じずに社会に開き、自分がどう関われるのか、「関わりしろ」をデザインしていくことが大事だと思います。一人ひとりが自分ごと化し、モチベーションを持って楽しんでいくことが「いのち輝く」ということであり、そのあり方そのものをレガシーとして残していけたらと思っています。
正頭
子どもたちは参加者側に立って夢をたくさんもらいましたが、自分がつくる側に回ることにはまだ距離を感じていると思います。だから私たちは大人とて、子どもたちに「できるよ」「つくってよ」と伝えます。あなたたちが万博をつくることを否定しないし、できるサポートはするよと、学校や社会全体でつないでいくと、きっと次のスタープレーヤーが出てきます。未来に向かって階段を1個1個つくってあげること。それが教育者としてやっていかなければいけないことなんだと、万博を通してバトンを受け継いだように感じています。

 

【事例紹介】 次世代の乗り物 水素燃料電池船「まほろば」

水素が運ぶ〝動くパビリオン〟

大阪・関西万博の会期中、大阪市内と夢洲を結ぶ〝動くパビリオン〟として注目を集めたのが、岩谷産業が手がけた水素燃料電池船「まほろば」だ。水素エネルギー社会の実現に向けて、その魅力を国内外に発信しようと運航した。水素と大気中の酸素を反応させて電気をつくる燃料電池と蓄電池を搭載し二酸化炭素を排出しない特長を持つ。

滑るように進む快適な乗り心地

 閉幕2日前の10月11日、ユニバーサルシティポートから夢洲まで約30分間の船旅を楽しんだ大阪府内在住の高校生3人は、乗り心地の良さに驚いた様子。関西学院高2年、奥村優菜さん(16)は、「揺れがほとんどなく、船酔いしやすい私でも、夢洲までの景色をしっかり楽しめました。脱炭素に貢献しつつ快適な旅が楽しめることに大きな魅力を感じます。旅の手段としてもっと活用されるようになってほしいです」と話し、府立東住吉高2年、新川良羽さん(17)は「様々な船に乗りましたが、振動や油の臭いで景色を眺める時にもストレスを感じることがよくありました。その点『まほろば』はストレスがなく、より身近に環境への意識を高められるように思います。SF映画に出てくる宇宙船のような姿も目を引き、水素というクリーンなエネルギーが注目を集める要素になると思います」と語った。次世代の乗り物に興味があるという高槻高2年、中谷圭吾さん(17)は、「足に直接伝わってくる振動がないのでとても快適です。水素エネルギーの可能性を実感できました。リアルタイムに船の発電状況などがわかるモニターがあると、さらに楽しめるのではないかと感じました」と期待を寄せていた。

 万博期間中、鉄道・バスに次ぐ交通手段として会場までの旅客航路を実現。今後は、万博レガシー(遺産)として東京都に「まほろば」を無償提供し、東京港での運航を予定している。


司会進行・コーディネーター

読売テレビアナウンサー
佐藤 佳奈




<主 催> 読売新聞社
<協 賛> 岩谷産業、クボタ、住友電気工業、大和ハウス工業、パソナグループ
<協 力> 読売テレビ
<後 援> 大阪商工会議所、関西経済同友会、関西経済連合会