編集委員のキーワード解説 KEYWORD

長期金利2%

 国や企業が10年といった長い期間お金を借りる時の金利を長期金利といい、日本では最も売買量が多い「新発(新規発行)10年物国債の利回り」が代表的な指標となっています。2025年12月に19年ぶりに2%を超えた長期金利は26年に入ってさらに上昇し、2026年1月には2.38%と、1999年2月以来、約27年ぶりの高い水準となりました。

 長期金利は債券市場で国債が売られる(=価格が下がる)と上昇し、国債が買われる(=価格が上がる)と低下する関係にあります。このメカニズムについては、この連載で以前に詳しく説明しています。

こちら

 長期金利の水準は、主に「物価」「需給」「海外」「政策」の4要因で決まるといわれています。物価が上がるとお金の価値が実質的に目減りするため、高い金利(利回り)をつけないと国債は買い手がつかなくなり、長期金利は上昇します。
 また、日本銀行は長期にわたって国債を大量に買い、長期金利を低い水準に抑え込んできましたが、植田和男総裁は買い入れを徐々に減らす方針を打ち出しました。これまで日銀が買っていた分を、民間銀行などが買うことになったため、高い利回りの国債でなければ売れにくくなり、長期金利の上昇を招いています。

 日本銀行は物価高を抑えるため政策金利を引き上げつつありますが、ゼロ金利政策を長く続けてきたため、日本の金利はまだ外国より低くなっています。政策金利は短期で返済する金利で、長期金利と連動しない面もありますが、一般的には短期金利と長期金利は連動して上下します。投資家は利回りが低い日本の国債より、利回りの高い米国債を買うようになり、日本の国債は売られて長期金利は上昇しやすくなっています。
 2026年1月に長期金利が急上昇したのは、高市内閣の政策が大きく影響したとみられています。25年10月に発足した高市首相は「責任ある積極財政」を掲げたことで、市場では国債の新規発行額が増えるとの観測から、長期金利は上昇傾向にありました。さらに高市首相は衆議院の解散を表明し、記者会見で食料品の消費税減税を自民党の公約に入れる考えを示したため、市場では与野党のどちらが勝利しても消費税減税が実現する可能性が高まったという見方が出て、財政悪化への懸念から国債の売りが加速して長期金利が急上昇したわけです。
 長期金利が上昇すると、 銀行の預金金利も徐々に引き上げられ、定期預金など期間の長い金融商品ほど金利は上昇します。半年ごとに金利が見直される個人向け国債をはじめ、貯蓄性の保険商品の予定利率も上昇が見込まれます。一方で貸し出し金利も上昇するため、住宅ローンの負担は増えることが予想されます。

 民間調査会社のみずほリサーチ&テクノロジーズの試算によると、25年12月の日銀利上げは、住宅ローンの返済をほぼ終え、金融資産を持つ世帯が多い高年齢層の世帯ほどプラス効果が大きく、住宅ローン残高が多く貯蓄が少ない若い世帯ほどマイナス効果が大きくなっています。若い世代では食料品の消費税減税による物価高対策の効果が、長期金利の上昇によって減殺されてしまう恐れもあるわけで、しばらくは長期金利の動向から目が離せない状況が続きそうです。

(読売新聞東京本社編集委員 丸山淳一)