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目覚めよJAPAN2025
「卓越した技をつなぎ、地域創生を後押し」
“ワザ伝”<後編>

 中小企業の経営者や従業員をサポートする「あんしん財団」が、2017年から開始し中小企業や伝統工芸の技術を次世代につなぐ「“ワザ伝”プロジェクト」。市井に受け継がれた東京の伝統的工芸品「江戸表具」と「東京手描友禅」を小学生が体験した前編。後編は、全国でのこうした取り組みを続けてきたあんしん財団の狙いや思い、今後の展開を、同財団の橋本修一常務理事のインタビューで解きほぐす。

一般財団法人 あんしん財団 橋本修一常務理事
一般財団法人 あんしん財団 橋本修一常務理事

――“ワザ伝”をスタートした理由は。

 日本の企業の9割超が中小企業で、そこで働く人たちは全体の7割を占めています。中小企業が持つ技術の高さが今後も経済を支えていくことを考えれば、次世代を担う子供たちに少しでもそのワザや技術を体験してもらい、将来の担い手になってもらえればと思っています。中小企業では、特に地方を中心に、経営者の高齢化に加えて、大学進学や就職で次世代を担う若者が地元を出てしまい、事業承継の課題が深刻化しています。技術を持ち、収益も上がっている「黒字企業」ですら廃業しているのが現状です。
 伝統工芸という歴史的に受け継がれてきた地域の魅力に触れることで、地域への思いとともに、先端技術につながる魅力があることを知ってもらうのが、“ワザ伝”です。

――中小企業の技術の潜在力とは何か。

 たとえば、セラミック。産業界の米(こめ)と言われる半導体のパッケージにも使われるセラミックは、日本の焼き物、陶器の技術が昇華したものです。形を変えて最新の技術の源泉になっているものは数多くあります。
 前編でご紹介した今年6月に東京で実施した“ワザ伝”で取り上げた江戸表具や東京手描友禅も、さまざまな形で近代化するモノづくりの世界に受け継がれているものがあります。多くの人が集う江戸だからこそ、京都や加賀の手描友禅とは違う自由な発想が根差し、創造の街、流行の発信地となりました。それを支えたのが、東京の手描友禅。よく似た伝統的工芸品でも地域が育んだ違いこそが、付加価値になると思っています。

これまでの“ワザ伝”プロジェクトの主な取り組み
これまでの“ワザ伝”プロジェクトの主な取り組み

――次世代にどのような点を感じ取ってほしいか。

 今の若い人たち、子供たちはデジタルやAI(人工知能)、ゲームに慣れています。そうしたものの魅力はもちろんありますが、自分自身にこそアイデアや技術を身に着けることができる可能性があることを知ってもらいたいです。
 江戸表具、東京手描友禅は自分の手先を使い、自分の発想を表現する。技術を培うことで、さらに表現する世界が広がっていく楽しみを感じてほしいです。子どもたちはちょっとした体験を吸収し、成長のきっかけになるし、働き始めるときに地域に残ることを考えることにつながる可能性もあります。
 これまでの“ワザ伝”で協力してもらった宮城県のモノづくり中小企業による任意団体「仙南マシンクラブ」は、金属を加工する精密コマで次世代を担う地域の子どもたちと交流を深めています。子どもたちは自ら設計して作り上げた精密コマに、台の上の「土俵」で、どちらが先にはじき出せるか戦わせます。自らの技術や思いを込めたモノが競う楽しみを中小企業との交流を通じて感じてもらうことで、中小企業のすごさや魅力を知ってもらいたいです。

過去の“ワザ伝”プロジェクトの様子
過去の“ワザ伝”プロジェクトの様子

――人手不足が深刻化する中、賃上げ競争になっていて、中小企業が置かれた環境は厳しい。次世代の働き手に選んでもらうにはどうしたらよいか。

 中小企業の技術、伝統工芸品の魅力が、ビジネスになっていかなければいけません。“ワザ伝”はあくまでもきっかけであって、そうした技術や製品に、商業的な価値を生み出していくことが大事でしょう。
 “ワザ伝”プロジェクトは地方創生に資するものだと考えていますし、災害大国の日本が直面する各被災地の復興支援にもつなげていきたいです。本プロジェクトの意義は、地域の財産を受け継ぐためにもその価値を少しずつでも知ってもらうことにあります。
 身近な中小企業のねじを作る技術が先端技術を支えているということも多いです。
 ロケットのエンジンに中小企業の技術が込められている――。
 最先端のファッションに日本の伝統工芸の美意識が練りこまれている――。
 小さい部分だと思わずに、そこに価値があることに気づいてもらいたいです。日本はもちろん、世界の産業を支えている中に、日本の中小企業の技術があります。
こうしたことを知ってもらい、中小企業で働くことに、興味、魅力を感じてもらいたいと思っています。

――今後の“ワザ伝”の展望は。

 直近では、能登半島地震の被災地を支援する意味でも、北陸の中小企業や伝統工芸に目を向けて、現地で“ワザ伝”を展開したいと思っています。
 地域の次世代を担う子供たちに地域の企業の魅力を伝える取り組みとして継続していきたいです。

“ワザ伝”<前編>はこちら