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目覚めよJAPAN2025
「混迷の時代に求められるレジリエンスとは?」
後編~不透明な時代の備え方~

東京海上ホールディングス株式会社ビジネスデザイン部長 原田秀美氏に聞く

 最大クラスのマグニチュード(M)9級の「南海トラフ地震」について、新たな被害想定がまとまった。死者数は最大で29万8000人、経済被害は前回想定から2割以上増えて約292兆円に上ると試算された。待ったなしの激甚災害に備え、なにができるのか。
 前編では、レジリエンスを高めるうえでカギとなる4領域について聞いた。後編では、どのように備えるべきか。具体論を聞く。

東京海上ホールディングス株式会社ビジネスデザイン部長 原田秀美氏

■被災状況をイメージし、被害を「見える化」する

――レジリエンス向上に向けて最も大事な点はなにか。

 万が一災害が発生した際に何が起こるかを具体的に想定することです。
 災害や不測の事態による損害は、建物や設備などの被害による損失だけにとどまらないということを意識して、備えをすることが大事です。企業であれば生産活動の停止によって、生活者でいえば避難生活によって、それぞれ経済的な損失を受け続けることになります。
 能登半島地震では、被災企業や被災者に対して現場で早期復旧をサポートしてきましたが、中には建物や設備に直接的な被害はなかったものの、安全性の確認などから工場を数ヶ月にわたって停止に追い込まれるケースもありました。企業にとっては、収益機会を失う機会損失、逸失利益が生じます。レジリエンスを高め、早期復旧できるようにすることで、こうした損害を極力抑えることができます。
 完全な災害の予測まではできないものの、「将来の災害に対する想像力」を働かせることは非常に重要です。例えば、災害発生前の段階で、リスクが実際に発生した状況(シチュエーション)として具体的にイメージできること、またその際に経済的にどのような被害が発生するかを事前に見える化(定量化)することが大切であると考えています。

ID&E傘下の日本工営の実験の様子。現地をできるだけ再現し、リスクを洗い出し、対策を提供する(同社提供)
ID&E傘下の日本工営の実験の様子。現地をできるだけ再現し、リスクを洗い出し、対策を提供する(同社提供)

 また、簡易なリスク評価を実施しているケースはあるものの、リスク評価の結果に対して、事前の対策が適切に講じられているケースは決して多くないかと思います。更なるレジリエンス向上のためには、確かな分析力を有するパートナーに相談のうえ、適切な対応策を検討・実行していくことが必要です。
 当社グループも保険会社としての経験・知見も生かしながら、事前に適切なリスク対策を促していくこと、それでも予期せず災害で被害が発生した際には、保険による経済的補償と復旧ソリューションの提供を通じて、社会・お客様のレジリエンス向上を支え、社会課題・経営課題の解決につなげていきたいと考えています。

■南海トラフ、グローバルサプライチェーンへの多種多様なリスクと向き合う

――過去の大規模災害を踏まえて多くの企業がすでに、BCP(事業継続計画)の策定に取り組んでいる。まだ足りないのか。

 BCPは大切な取り組みで、我々も策定のお手伝いをしてきました。ですが、どうしてもソフト中心になりがちです。
災害の激甚化・グローバル化などを通じて、民間企業にとって災害対策・レジリエンス向上は、ますます事業課題・経営アジェンダとして取り組むべき課題になっています。
 そうした中で、建設コンサルティング最大手で、ハード面のノウハウも併せ持つID&Eホールディングスがグループに加わったことで、ハード、ソフトの双方でリスクへの備えを提供できると考えています。
具体的に申し上げれば、工場のどの場所に防水壁や止水板を設置するのが適切なのかや、どのようなリスクが想定されるのかなど、より的確な対策を講じることが可能になります。
 どのリスクを想定し、どのような対策を講じるのか。シミュレーション分析と確固たる技術によって、費用対効果の高い備えが実現できます。
 特に、南海トラフでは深刻な被害が想定されています。どのような備えをしていたとしても、民間企業も地域によっては、被害を避けられない可能性が高いです。事業存続・事業環境にも多大な影響を及ぼすことが想定されます。また、グローバルサプライチェーンの進展に伴い、国内外の多種多様な災害によって、サプライチェーン全体への影響は計り知れず、企業経営にも直結するインパクトをもたらすことが想定されます。
 これまでの保険事業等を通じ、多くの企業のお客様から、「企業の全社的なリスクマネジメントの観点においても、あまりに多種多様なリスクがグローバルに想定される中で、どこから手をつけていいかわからない」や、「個別テーマごとには相談先はあるが、一元的に相談できるパートナーがいない」などという声を聞いています。
企業の中には、災害対策を主導する部署等が明確化されておらず、ベースとなる予算もないため、対策を講じたいという想いがあっても、全社的な推進が進展しない課題感をお持ちのところも多いようです。
 ID&Eのグループ化によって、保険事業・レジリエンス事業を推進する立場として、真正面から課題と向き合い、課題解決・価値提供をします。

■災害大国の日本から、新しい「備え」のスタンダードを世界へ

――今後の展開は。

 気候変動や地震など、リスクの根源は変わりません。つまりリスクは今後も顕在化してしまう。いかに分析し、同じようなリスクに対して備えられるかが大事になってきます。一方で、リスクに対して間違った備えや過剰な備えになっていないか、という問題があります。
 民間企業では今、経営の脱炭素リスクを開示する国際的な枠組み「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」において、適切な備えを講じ、公表することが求められています。事業継続が困難な状態が長く続けば、収益機会を失うことによって大きな打撃を受けます。どのような対策をとっているかが、大切になっています。
 従来は、保険に加入することで将来の災害に備えるというのが一般的でしたが、保険の引き受けのリスク評価の結果を踏まえて、適切な事前対策を講じたうえで、将来的な災害に備えて保険に加入いただく、さらには有事の際には、保険のお支払いと早期復旧策などを組み合わせた価値提供を行い、激甚化・頻発化する災害に備えた「レジリエントな世界」を実現していく考えです。

日本から「レジリエンス」の新たなスタンダードの創造に向けて意欲を語る原田秀美氏
日本から「レジリエンス」の新たなスタンダードの創造に向けて意欲を語る原田秀美氏

 サプライチェーンがより国際化、複雑化している中では、災害はもちろん地政学リスクや人権リスクなどさまざまな問題に対処していかないといけません。ソフト・ハード対策を含めた事前の対策と、有事の際の経済的補償・事後の対策などを一気通貫で価値提供を行う「レジリエンス事業」を通じて、新しい価値を創造し、将来的にはアジア、北米にも展開できるのではないかと思っています。
 災害大国の日本だからこその新しいスタンダードを世界に発信していく考えです。

目覚めよJAPANでは、5月下旬、日本経済の潜在力を探る経済フォーラムをオンライン配信します。その中でも、「激甚災害、インフラ老朽化‥。想定外に備えるには~本当のレジリエンスとは~」(仮)を取り上げます。