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「力を覚ます!成分のヒミツ」
ミノキシジル編
毛根の潜在力に直接働きかけるミノキシジル。ナノ粒子化による発毛作用最大化への期待
「力を覚ます!成分のヒミツ」後編は、発毛剤の成分として知られるミノキシジルに迫ります。ミノキシジルの発毛作用に着目し、1985年より研究し続けている大正製薬の研究本部製剤第3研究室開発1グループマネージャーの阿部晃也さんに話を聞いた。
副作用を逆手に取って生まれた発毛剤
思春期以降に生え際や頭頂部から徐々に髪が薄くなる壮年性脱毛症に効果のある発毛剤の有効成分として知られるミノキシジルですが、もとは高血圧治療薬に使われる降圧成分でした(壮年性脱毛症は、AGA〈男性型脱毛症〉と呼ばれることもあります)。
高血圧治療薬としてミノキシジルを服用した方に副作用として体毛が濃くなる症状があったことに着目して生まれたのが、外用薬の発毛剤です。
内服薬は体の中から血流に乗って全身に作用するため、一般的に外用薬よりも高い発毛効果が期待されますが、副作用のリスクも高くなります。発毛剤は外用薬のため、頭皮に直接作用し、効果は内服薬より限定的ですが主な副作用も局所的であり内服薬よりもリスクは低いと考えられます。
発毛剤として使えるようにするためには、ミノキシジルによる血流促進に伴う動悸などの副作用や日本人の頭皮に適した使用感など、効果と副作用のバランスを多面的に考慮してミノキシジルの濃度を設定する必要があります。
ミノキシジルを含んだ外用薬は、様々な製品が販売されていますが、いずれの製品も第1類医薬品に分類され、購入時には、薬剤師が利用者の症状等への適合性を判断したり、副作用を説明したりすることが義務づけられています。
毛髪を支える細胞に直接働きかける
髪は、頭皮の毛穴から発毛し、成長したあと自然に抜け、再び同じ毛穴から新しい毛髪が生えます。この繰り返しをヘアサイクルといいます。ヘアサイクルは、成長期・退行期・休止期に分かれ、通常、成長期の毛髪は全体の80~90%、休止期の毛髪は10~20%を占めると言われています。
壮年性脱毛症は、毛根を包む頭皮までの筒状の部分「毛包」が成長期に十分に成長しないため、毛包がどんどん小さくなることで生えにくくなります。薄毛に見えるのは、成長期が短く髪の毛の一本一本が十分に成長しないためです。髪の毛は、通常の方でも1日に50本~100本ぐらい抜けています。ただ、それ以上になると壮年性脱毛症の可能性があります。
ミノキシジルは、小さくなった毛包に直接働きかけ、細胞の増殖やタンパク質の合成を促進する効果があります。毛包を活性化することで、発毛を促し、細く軟毛化した毛髪を太い毛に成長させる効果があります。
さらに、降圧薬として使われてきたミノキシジルの効果でもある血管の拡張作用も、毛包周囲の血流が改善し、毛包に十分な栄養や酸素を供給し、発毛の促進や育毛をサポートすることもわかってきました。
***ヒストリー***
ミノキシジルが発毛剤として使われるようになったきっかけは、降圧薬の臨床試験で副作用として多毛が発現したことでした。米アップジョン社がこの副作用を逆手にとって、発毛薬として開発しました。
米国では1988年に米食品医薬品局(FDA)に承認され、日本では一般用医薬品として1999年に外用薬の発毛剤として承認、発売されました。ミノキシジル外用薬は90ヵ国以上で発売されています。
ミノキシジルは国内では、「壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防。」の効能効果が承認されており、新しい髪を作り出す力を持つ唯一の成分と言われています。一方、動悸など副作用のリスクもあるため、日本ではミノキシジルを含んだ発毛剤は薬剤師による対面での説明が義務付けられている「第1類医薬品」です。
***ヒストリー***
毛髪のチェックポイントは、3つ。量と状態、そして・・・
髪の毛は1ヵ月で1cmほどしか伸びないといわれています。発毛効果が発揮されるまでには、少なくとも数ヵ月の期間が必要です。
効果のチェックポイントは、
・抜け毛の量……洗髪やブラッシングの際、抜け毛の量は減っているか
・産毛の状態……頭皮を軽く触ると、新しい産毛が生えてきたのがわかるか
・毛髪のハリやコシ……毛髪を触ると、太くなってハリやコシが出てきたのがわかるか
です。
毎日鏡を見ていると変化に気づきにくいものですが、発毛剤の使いはじめに頭部を撮影し、その後定期的に同じ条件で写真を撮って比較するのもよい方法です。
なお、ミノキシジルは壮年性脱毛症の原因を取り除くものではないため、効果が得られたからといって使用をやめてしまうと、徐々に使用する前の状態に戻ってしまいます。
水にも油にも溶けにくいミノキシジル
ミノキシジルは水にも油にも溶けにくい性質があります。発毛剤をつくる上では、まずこのミノキシジルをどうやって溶かすかが重要となります。効果だけでなく、安全性、品質、使用感など、満たすべき要件がいくつもあるからです。それらを考慮して最適な設計をしていきます。
たとえば、ミノキシジルの溶解や皮膚吸収を助ける溶剤として、溶解に適した多価アルコールが挙げられます。ただ、これらを多量に配合すると、頭皮の刺激・かぶれの原因となる可能性があるほか、乾きにくさやべたつきなどの使用感の課題につながります。また、添加剤や溶剤の種類・比率によってはミノキシジルの皮膚吸収に影響を与えることもあるため、副作用のリスクにも配慮が必要です。
ナノ粒子化による「毛包ターゲッティング技術」の新たな可能性
ミノキシジルをナノ化(ナノ粒子化)した製剤技術の開発を進めています。“発毛作用の最大化”と“副作用の最小化”の両立が期待できるからです。
もっとも、一般にナノ化は粒子同士の凝集や製剤の安定性、使用感(べたつき等)の悪化につながりやすく、外用剤としての最適化は容易ではありません。大正製薬は近畿大学・長井教授の研究室と連携し、ミノキシジルをナノ粒子化しつつも、製剤の粘度を約30分の1まで低減させることに成功しました。この技術により、ナノ粒子製剤の使用感を改良できる可能性があります。
効果の面でも改善が見込まれます。ナノ粒子の大きさは、毛包の開口部にあたる毛穴に入り込めるくらい非常に微細ながら、角層(皮膚の表面)は通過できない絶妙なサイズです。ローション剤と比較して、皮膚表面からの成分吸収が高くなりすぎることによる副作用は抑えつつ、毛包周辺の薬物濃度を選択的に高め、発毛作用を向上させることを期待しています。実際に、マウスを用いた製剤塗布試験では、ナノ化製剤は従来のローション剤よりも毛包周辺におけるミノキシジル濃度が高まっていることが確認されました。
発毛作用の最大化と副作用の最小化を両立したこの技術を「毛包ターゲッティング技術」と呼び、発毛剤の新しい時代を切り拓く技術と我々は考えています。
大正製薬ニュースリリース「ナノ化ミノキシジルによる 早い発毛効果とそのメカニズムを解明」
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