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トップ>人―かお>紛争解決型弁護士から紛争予防型弁護士へ ~相続で苦しめられる人を0に~

人―かお

伊勢田 篤史さん

伊勢田 篤史さん 【略歴

紛争解決型弁護士から紛争予防型弁護士へ

~相続で苦しめられる人を0に~

伊勢田 篤史さん/弁護士・公認会計士

華麗なる転身からの挫折~恩師との出会い~

 弁護士になる前は、公認会計士として、主に会計監査業務を担当していました。

 傍から見れば、大学在学中の最年少公認会計士試験合格から大手監査法人勤務と、恵まれたキャリアではありましたが、心の中では、その後のキャリアについてとても悩んでいました。結局、考えに考え抜いた結果、高校生のときからの「弁護士になりたい」という夢をかなえるため、中央大学法科大学院に進学することにしました。

 会計士試験で旧商法については勉強していたものの、その他の法律については全く勉強したこともなく、いわゆる純粋未修者でした。

 もちろん、非常に困難な道であることは自覚していましたし、実際に誰にも負けないくらいの勉強はしていましたが、1年次の最初の期末試験で挫折を経験しました。

 中央大学法科大学院では、A~Eの評価がつき、A~Dまでが及第、Eが落第(2010年度当時は再試験による救済があった)というものでした。そして、GPAによる評価で進級が決まることとなっており、GPA1.6未満は2年生に進級できないという制度となっていました。

 GPAとは、各科目の単位数×評価ポイント(Aなら4点、Bなら3点、Cなら2点、Dなら1点、Eなら0点)を総単位数で割って計算されるもので、オールAならGPA4.0、オールDならGPA1.0という形で表現されるものでした。

 そして、私の1年生前期の成績なのですが・・・
憲法    A
民法(物権)D
民法(債権)E(追試により⇒D)
刑法    D
で、GPA1.35という結果でした(追試で、民法(債権法)がDとなったため、最終的には、GPA1.64でしたが)。

 自分の人生において、過去全く見たこともない成績に、目の前が真っ暗になりました。「来る世界を間違えたかな」「会計士の世界に戻ろうか」・・・と、しばらく立ち直れませんでした。

 そして、そんな私に追い打ちをかけるような出来事がありました。

 もう既に「時効」ということで関係者の皆様には御許しを頂ければと思いますが・・・当時、非常に親身に指導していただいた民法(物権)の故清水元先生に相談に行ったところ、「(君の)試験の成績のみからすれば、E評価だった。ただ、普段の授業態度等と合わせて評価した結果、D評価としたんだよ」という裏話を教えていただきました。

 評価が定期試験のみでされていたとしたら、私のGPAは1.07だったのかもしれません。

 もしも民法(物権)の評価がEとなっていたら・・・恐らく弁護士としての私はいなかったものと思います。

 その後、清水先生や周りの友人の支えもあり、勉強方法を根本から見直し、1年の後期からは成績を上げ、2年次の成績では奨学金を取得、卒業後の司法試験にも無事ストレートで合格することができました。

 清水先生は、私が弁護士登録日の数日前に急逝されてしまい、残念ながら直接のご報告は叶いませんでしたが、今でも、清水先生の著書である「プログレッシブ民法」はお守りとして、自室の本棚に飾っています。

相続で苦しめられる人を0に

(争族体験セミナー®風景)

 中央大学法科大学院では、上記のような挫折もありつつも、様々なことを学びました。個人的に、法科大学院の授業の中で最も記憶に残っている授業は、野澤先生の家族法の授業です。

 野澤先生の授業では、「家族にはヒストリーがある・・・(だから、相続は揉める)」等、示唆に富んだ名言が多く、相続という世界に非常に興味を持ちました。それは、今まで監査法人という組織対組織のドライな世界にいたからこそ、人対人のウェットな世界に「あこがれ」に似た感情を持っていたからかもしれません。

 実際、弁護士となり、数多くの相続の現場を経験してきました。相続案件に触れる度に、野澤先生の「家族にはヒストリーがある」という言葉がフラッシュバックします。

 これまで、多くの相続案件を担当し、相手方の一挙手一投足に苛立ち、精神的に辛い思いをされる方を多く見てきました。ただ、他の事件とは異なり、相続は、人は必ず死ぬという性質上、予見できる問題でもあります。

「将来必ず起こる相続問題に対し、事前に適切な対応を行うことで、相続で苦しめられる人を0にしたい。」

 数多くの相続に触れる中で、このような想いを持つに至りました。

 現在は、「揉めてから来てください」という紛争解決型の弁護士としてではなく、「揉める前に来てください」という紛争予防型の弁護士として、多くの相続トラブルの予防に取り組んでいます。一方で、相続のことをより知ってもらうため、相続争いを体感してもらう争族体験セミナー®等を企画し、一般の方により相続の怖さを体感してもらうセミナー活動も積極的に行っています。

 相続で苦しめられる人が0になる社会の実現までは、まだまだ遠い道のりですが、一歩一歩進んでいきたいと思います。

最後に

 故スティーブ・ジョブスの言葉に、「You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.」というものがありますが、私はまさに中央大学法科大学院でthe dotsをたくさん得ていたのだと思います。大学院で得た、多くのdotsを結びながら、紛争のない社会の構築を目指していきたいと思います。

伊勢田 篤史(いせだ・あつし)さん
千葉県出身。1983年生まれ。2002年慶應義塾大学経済学部卒業。
大学在学中に、当時最年少で公認会計士試験二次試験に合格。その後あずさ監査法人で監査業務を中心に担当するも、一念発起して中央大学法科大学院へ進学。大学院修了後、司法試験に合格し、現在は、弁護士・公認会計士として活動。
主要著作に、「ストーリーでわかる 営業損害算定の実務 新人弁護士、会計数値に挑む」(日本加除出版)がある。
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