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地域を支える中堅・中小企業のチカラ①
supported by あんしん財団
地域に根ざし、社会の困りごとに応える――サクラパックスが大切にする「顧客本位」と「利他の心」
あんしん財団が送る「地域を支える中堅・中小企業のチカラ」シリーズ。
独自の技術やサービスで社会を支える中小企業を紹介します。経営者の思いや挑戦、地域への貢献を通じて、中小企業が持つ可能性を伝えます。
第1弾では段ボールという身近な製品を通じて地域を支えるサクラパックスの橋本社長にお話を聞きました。
プロフィール
1971年5月 富山県富山市生まれ。1994年3月に法政大学経営学部を卒業し、1994年紙商社(京都)勤務後、1995年から米国留学。
1996年11月 サクラパックス株式会社入社。専務、副社長を経て2008年5月、代表取締役社長に就任。(現在19年目)。2011年には日本青年会議所 副会頭を務め、防災担当として東日本大震災の復興に従事。2022年から富山商工会議所 副会頭に着任。地元の発展と関係人口拡大に取り組む。トータルパッケージサービス企業として事業領域を拡大し、社会貢献事業にも積極的に取り組む。
現在、売上136億円・社員453名を擁し、地域を代表する企業へと成長を遂げている。
富山県に本社を置くサクラパックスは、段ボールの製造・販売を主力とする包装資材メーカーです。戦後復興の中で歩みを始め、まもなく1947年の創業から80年となります。北陸・信越を商圏に、地域のものづくりや物流を支えてきました。段ボールという身近な素材を通じて、企業の課題解決から災害支援、地域貢献まで取り組みを広げるサクラパックス。同社が大切にしているのは、地域に根ざした信頼、顧客の立場に立つ「お客様本位」、そして社会のために自社の力を生かす「利他の心」だと言います。
富山発の段ボールメーカー、サクラパックスとは
――サクラパックスはどのような会社ですか。
サクラパックスは、段ボールの製造・販売を中心に事業を展開している会社です。もともとは紙の加工から始まりましたが、戦後の復興期に物が動く中で、木箱に代わる新しい包装資材として段ボールに着目しました。日本海側で初めて段ボールの製造・販売を始めたのが、当社の出発点です。
現在も売り上げの8割近くは段ボール関連です。富山、石川、新潟、福井を中心とした北陸・信越が主な商圏になります。段ボールはリサイクル率が高く、環境にやさしい素材ですが、一方でかさばるため、遠くまで運ぶとコストが合いません。商圏は半径100〜150キロほど。つまり、段ボールは非常に地域性の強い地場産業なのです。
――地域に根ざしていることが、会社の強みになっているのですね。
そうです。段ボールは、商品そのものではなく、商品を包むものです。お客様にとっては、どうしても最後に考えるものになりがちです。だからこそ、地域で名前を知っていただき、信頼していただくことが大切になります。
当社の強みの一つは、3代にわたって富山、石川、新潟を中心に信頼を積み重ねてきたことです。地場であること、必要な時に応えられること、そして地域の中で「あの会社なら任せられる」と思っていただけること。それが大きな力になっています。
もう一つの強みは、パッケージ設計です。商品を安全に運ぶためには、単に箱に入れればよいわけではありません。緩衝材をどうするか、組み立てやすくするにはどうするか、材料をできるだけ減らすにはどうするか。そこには設計の力が必要です。当社は早くから設計部門を強化し、現在も15人の設計担当者が在籍しています。
こうした設計力は、国内外でも評価されています。パッケージ業界には、優れた設計や開発を表彰する日本の「ジャパンスター賞」、アジアの「アジアスター賞」、世界の「ワールドスター賞」があります。サクラパックスは世界的な包装コンテストであるワールドスター賞を2年連続で受賞しました。単に箱を作るのではなく、商品を守り、使いやすく、環境にも配慮した包装を設計する。その積み重ねが、世界でも認められる技術力につながっています。
ワンマン経営から理念経営へ。サクラパックスの経営改革
――経営改革にも力を入れてきたと聞きました。
私が社長に就任した当時、会社には大きな課題がありました。先代の時代は、トップがすべてを決めるワンマン経営でした。それは中小企業にとって強みでもありますが、組織として成長していくには限界もあります。私が目指したのは、社長がいなくても回る会社です。そのために、理念と戦略の両方が必要だと考えました。理念は、みんなで登る山の頂上のようなものです。ただし、山に登るには装備やルートも必要です。それが戦略であり、仕組みです。
最初から理念を掲げたわけではありません。まずは清掃から始めました。もともと朝の清掃はありましたが、そこに意味を持たせ、「環境整備」として取り組みました。清掃を通じて考える癖をつけ、PDCA (計画・実行・評価・改善を繰り返し、業務を継続的に見直していく手法)を回す訓練をする。そうした積み重ねの先に、理念の浸透があります。大きな改革でしたが、亀の歩みのように時間をかけて少しずつ進めました。
顧客本位と利他の心で、企業の困りごとに向き合う
――「お客様本位」と「利他の心」を大切にしているそうですね。
お客様本位とは、お客様の立場に立つことです。かつては、当社も「段ボールを買ってください」という営業が中心でした。しかし、本当に大切なのは、お客様が何に困っているのかを聞くことです。
最初の困りごとは段ボールかもしれません。でも、その先には、梱包作業を効率化したい、商品をもっと魅力的に見せたい、売り場で使う什器がほしい、といった課題があります。そこに対して、当社の設計力や段ボールの加工技術を生かして提案していく。お客様のさらに先にいる消費者まで考えることが、本当のお客様本位だと思っています。
その根底にあるのが、利他の心です。相手のことを思い、相手の役に立つことを考える。採用や社員教育でも、この考え方を大切にしています。自分たちの利益だけでなく、お客様や地域、社会にとって何がよいのかを考える集団でありたいと思っています。
段ボールと設計力を生かした社会貢献
――社会貢献にも積極的に取り組んでいます。
当社では、社会貢献は特別なことではなく、会社の特性を生かして行うものだと考えています。サクラパックスの特性は、段ボールと設計力です。だからこそ、その力を社会の困りごとに役立てたいのです。
2016年の熊本地震以来、「被災地の記憶を風化させたくない」という想いを胸に、段ボール製の熊本城模型を作り、1個2000円の販売額全額を復興支援に充てる支援活動を行ってまいりました。2016年熊本地震の復興支援においては、これまでに総額5500万円超を寄付しています。
段ボールという当社の本業を生かし、誰もが手を動かして城を組み建て、飾り、被災地へ想いを寄せる——そんな“参加型の支援”を全国へ広げました。
模型を組み立てる時間は、熊本に思いを寄せる時間になります。完成した模型を飾ることで、被災地を忘れないきっかけにもなります。
ただ寄付をするだけでなく、思いをつなぎ、風化を防ぐ仕組みにしたかったのです。
今回、地震が再び熊本を襲い、多くの方が不安と困難の中にあります。こうした状況を受け、当社として「もう一度、熊本の象徴を皆で立ち上げる力になりたい」と考え、「熊本城 組み建て募金」を再始動いたしました。 被災された方々の安全と一日も早い復旧を願い、皆様と共に“あきらめない熊本”を支える活動を続けてまいります。
令和8年熊本地震緊急支援実施中。詳しくは「熊本城 組み建て募金」オフィシャルサイトをご覧ください。
コロナ禍では、段ボール製のパーテーションを医療機関などに提供しました。外出できない子どもたちに向けて、家庭にある段ボールで作れる工作のアイデアも発信しました。段ボールという身近な素材でも、人を守ったり、笑顔を生んだりすることができます。
――能登半島地震では、どのような支援を行ったのでしょうか。
発災後、段ボールベッドやパーテーション、簡易トイレなどを被災地に届けました。行政の仕組みを待つだけではなく、必要としている現場に早く届けることを優先しました。ただ、私はそれを1社の「活動」で終わらせてはいけないと思いました。情報を発信することで、他の企業や団体が被災地に入るきっかけをつくる。義援金の動きや、被災地の商品を買って支援する仕組み、自粛を減らして地域経済を回す呼びかけ、観光を応援する取り組みなど、支援を「運動」に広げることを意識しました。
災害時に必要なのは、物資だけではありません。お金、人の流れ、情報、そして記憶をつなぐことも大切です。被災地を忘れない、防災意識を風化させない。そこにも企業としてできる役割があると思っています。
サクラパックスが広げる段ボールの可能性
――今後どのような存在を目指しますか。
物流のあり方が大きく変わろうとしています。海外でドローン配送を視察する機会もありました。今後は商品を「どう包むか」だけでなく、「どう運ばれるか」まで含めた発想が求められると考えています。ドローンや自動運転が普及すれば、荷物の大きさや重さ、積み方、受け取り方も変わる可能性があります。だからこそ、段ボールメーカーとして設計力を磨くだけでなく、物流の変化を先取りし、顧客の商品がより安全に、効率よく届くための企画提案にも力を入れていく考えです。
もうひとつ、サクラパックスが力を入れる取り組みがM&Aです。人口減少や市場縮小が進む中、地域の段ボール会社には、単独では設備投資や経営改革に取り組みにくい企業もあります。サクラパックスは、自社で磨いてきた理念経営や仕組み化、設計力を生かし、そうした企業の経営を支えながら、北陸・信越の段ボール事業全体の活性化につなげたいと考えています。
M&Aは単なる規模拡大ではなく、地域に必要な供給網や雇用、技術を次世代につなぐための手段でもあります。地域に根ざす企業として、同業他社とも力を合わせながら、北陸・信越のものづくりを支える基盤をより強くしていく考えです。
サクラパックスは、これからも段ボールの可能性を広げながら、地域に必要とされる会社であり続けたいと考えています。
「目覚めよJAPANフォーラム」開催決定!
9月18日(金)よみうり大手町ホールにて「目覚めよJAPANフォーラム」を開催します。
SESSION2「地域の中堅・中小企業のリアル~人的資本経営と成長戦略を問う~」では地域経済を牽引する注目の中堅・中小企業の現役経営者らが登壇します。
総合建設会社「小田島組」、包装資材メーカー「サクラパックス」、鋳物メーカー「能作」――。
労働力不足やリスク管理、事業承継といった直面する多様な経営課題をどう解決しているのか。三者三様の視点で紐解き、強みである技術力をさらに磨き、地域経済を活性化させるための取り組みや成長戦略を探ります。
※参加募集は締め切りました。10月下旬頃、本サイトにてレポートを掲載予定です。
SESSION2登壇ゲスト現役経営者へのインタビュー