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地域を支える中堅・中小企業のチカラ②
supported by あんしん財団
「地方だから」を、挑戦しない理由にしない――小田島組が切り拓く建設業の未来
あんしん財団が送る「地域を支える中堅・中小企業のチカラ」シリーズ。
独自の技術やサービスで社会を支える中小企業を紹介します。経営者の思いや挑戦、地域への貢献を通じて、中小企業が持つ可能性を伝えます。
第2弾では生成AIを活用したDX化を推進する総合建設会社・小田島組の小田島社長にお話を聞きました。
プロフィール
1964年岩手県生まれ。中央大学理工学部電気工学科を卒業後、大手建設会社に就職。5年間勤務したのち、株式会社小田島組に入社。2003年同社代表取締役に就任。徹底したIT化による生産性の向上や、経営改革の理解を深める早朝勉強会などを通じて社員教育に取り組み、業績の飛躍的な向上を実現した。
岩手県北上市に本社を置く小田島組は、道路や橋、ダムなどの公共土木工事を通じて、地域の社会インフラを支えてきました。東日本大震災からの復旧・復興工事や、地滑りで通行できなくなった国道の復旧など、地域の安全と暮らしを守る工事に数多く携わっています。一方、同社の挑戦は建設工事だけにとどまりません。施工写真の整理を請け負う新事業や、生成AIを活用した商品・サービスの開発を進め、M&Aによって事業地域も拡大していく小田島社長が経営改革と地方企業の可能性に抱える思いとは。
地域の暮らしを守る公共土木工事
――小田島組はどのような会社ですか。
父・敏夫氏が創業した会社で、道路や橋、ダム、砂防施設などを整備する公共土木工事を中心に事業を展開しています。地域の皆さんが使う道路をつくったり、災害で被害を受けたインフラを復旧したりする仕事です。
東日本大震災では、被災した道路をはじめ、さまざまな社会インフラの復旧工事に携わりました。近年では、岩手県と秋田県を結ぶ国道107号の工事を手がけています。道路や橋は、地域の暮らしや物流を支える大切な基盤です。災害時に地域を守ることも含め、社会インフラをつくり、維持していくことが私たちの役割です。
売上高5億円から始めた経営改革
――当初から家業を継ごうと考えていたのでしょうか。
卒業後は大手建設会社に入社しました。当初から家業を継ぐと決めていたわけではありません。全国転勤を伴う働き方に迷いを感じた時、尊敬する先輩から「自分にしかできない仕事があるなら、そちらを選んだ方がいい」と背中を押され、岩手へ戻りました。
小田島組に入社して約8年後の2003年、社長に就任しました。当時の売上高は約5億円、社員は約40人でした。ただ、社長になった時点では、経営について十分に理解していたわけではありません。40歳ごろから外部で経営計画や組織運営を学び、それまでの延長線上では会社を成長させられないと気付きました。地域の慣行や関係性だけに頼るのではなく、技術力や生産性、採用力を高め、顧客から選ばれる会社へ変わる必要があると考えたのです。
改革には反発もありましたが、業績が改善し、お客様からの評価が高まるにつれて、社内外の理解も広がりました。現在は秋田や宮城にも事業基盤を広げ、グループ全体で売上高約45億円、社員約200人の規模になっています。
現場の課題から、新しいサービスを生み出す
――建設工事から派生した新事業にも取り組まれています。
建設現場では、工事が設計通りに行われたことを証明するため、施工の各段階で多くの写真を撮影し、報告資料にまとめます。この整理作業は現場の技術者にとって大きな負担です。そこで、施工写真の整理を専門のチームで請け負うカエレル事業を立ち上げました。クラウドを活用し、岩手にいながら首都圏の大手ゼネコンの業務も受託しています。
若手や女性の社員が増える中、出産や育児といった生活の変化に応じて働き方を選べる環境も必要になりました。この事業は複数人で業務を共有するため、急な休みや産休、育休にも対応しやすく、復職もしやすい仕組みです。現場経験を生かしながら内勤で働き、生活が落ち着いた後に再び現場を目指すこともできます。自社の働き方の課題から生まれたサービスは、年間約1億円を売り上げる事業へ成長しました。
生成AIを前提に、仕事を再設計する
――現在、特に力を入れているのが生成AIを使った事業改革ですね。
生成AIは、地方の会社にとって大きな可能性を持つ技術だと考えています。専門的なプログラミングの知識がなくても、自然な言葉で指示を出し、対話しながら活用できます。地方にいることや、これまでデジタルを専門的に学んでこなかったことが、大きなハンディにならない時代が来ています。
当社では、AIを文章作成や検索に使うだけでなく、AIを使うことを前提に仕事の流れそのものを組み替えています。例えば、会議を録音してAIに議事録を作らせるのであれば、冒頭で参加者の名前や役割を明確にします。AIが発言者や議論の構造を理解しやすくなり、精度の高い記録を作れるからです。報告書も、自分が伝えたい順番ではなく、相手が理解しやすい形に整えます。結論を先に知りたい人もいれば、背景から説明した方が理解しやすい人もいます。大切なのは「伝えたか」ではなく、「相手に伝わったか」です。AIを業務効率化だけでなく、社内のコミュニケーションやマネジメントの改善にも活用しています。
――社員のAI人材育成も進めています。
ITパスポートや生成AIパスポート、統計検定など、デジタルやAIに関する複数の資格を指定し、取得した社員の昇給に反映する制度を設けました。
会社が必要だと考える能力であれば、学ぶように求めるだけでなく、その習得に投資し、処遇にも反映する必要があります。制度の導入後、多くの社員が資格取得に挑戦し、AIを使うことが日常の仕事として定着し始めています。
自社の建設現場を実証の場として、危険を事前に察知する仕組みや、報告業務を効率化するサービス、社員同士のコミュニケーションを支援するツールなどの開発も進めています。建設業はDXの余地が大きいからこそ、新しい市場をつくる機会があると考えています。AI関連事業では、5年後に売上高6億円を目指しています。
M&Aで地域の会社と雇用を未来へつなぐ
――M&Aにも積極的に取り組んでいます。
公共工事は地域に欠かせませんが、一つの地域で発注される工事量には限りがあります。また、地方の建設会社では、後継者不足によって事業の継続が難しくなるケースも増えています。当社はM&Aによって秋田や宮城の建設会社をグループに迎え、事業地域を広げてきました。単に売り上げや規模を拡大するだけではなく、地域に必要な会社や雇用、技術を次の世代へ残すことも目的です。
今後は、岩手県内の各地域にグループ会社がある状態を目指しています。それぞれの会社が地域の公共工事を担いながら、小田島組が培った採用や人材育成、AI活用、新規事業の仕組みを共有することで、グループ全体の力を高めたいと考えています。
施工写真整理やAIサービスのように、地域を越えて提供できる事業も育て、将来的にはグループ売上高100億円を目指します。
――どのような会社を次の世代に残したいですか。
岩手に暮らしながら、都会に負けない仕事と収入を得られる会社をつくりたいと思っています。地方だから、経験がないからといった理由で、挑戦する前に諦めてしまう人は少なくありません。しかし、AIやデジタル技術を使って工夫すれば、地方から全国の企業を相手に仕事ができます。
小田島組では、経営方針や数値目標などをまとめた「経営計画書」を作り、全社員に配っています。会社がどこを目指すのか、そのために何を大切にして仕事をするのかを、社員と共有するためのものです。経営計画を示した上で、一人ひとりが「どう実現するか」を考える。そうやって会社全体で同じ方向を向きながら挑戦していきたいと考えています。
会社を大きくすることや賃金を上げることは、それ自体が目的ではありません。社員が自分の可能性を諦めず、豊かな生活を実現できるようにするための手段です。地域のインフラを守るだけでなく、地域に新しい仕事と産業をつくる。「地方にいても挑戦できる」と、次の世代に感じてもらえる会社になりたいと思っています。
「目覚めよJAPANフォーラム」開催決定!
9月18日(金)よみうり大手町ホールにて「目覚めよJAPANフォーラム」開催決定!
SESSION2「地域の中堅・中小企業のリアル~人的資本経営と成長戦略を問う~」では地域経済を牽引する注目の中堅・中小企業の現役経営者らが登壇します。
総合建設会社「小田島組」、包装資材メーカー「サクラパックス」、鋳物メーカー「能作」――。
労働力不足やリスク管理、事業承継といった直面する多様な経営課題をどう解決しているのか。三者三様の視点で紐解き、強みである技術力をさらに磨き、地域経済を活性化させるための取り組みや成長戦略を探ります。
※参加募集は締め切りました。10月下旬ごろに本サイトにてレポートを掲載予定です。
SESSION2登壇ゲスト現役経営者へのインタビュー