新たに始まる「こどもNISA」 親子でお金を考えるきっかけに
~投資アドバイザー 代田秀雄さん vol.3~
「貯蓄から投資へ」の流れが加速する中、上場株式や投資信託への投資で得た利益が非課税になる「NISA(少額投資非課税制度)」で資産運用に取り組んでいる方も多いでしょう。そのNISAに2027年、0歳から17歳の未成年を対象とした「こどもNISA」が新たに設けられる予定です。「オルカン」の愛称で知られる投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の生みの親で、投資アドバイザーの代田秀雄さん=写真=に資産形成について聞く連載の最終回は、こどもNISAについて伺いました。
2027年創設の「こどもNISA」…使い勝手を向上
──こどもNISAは、政府が2025年末に閣議決定した2026年度税制改正大綱に盛り込まれたもので、2027年から始まる予定です。どんな内容でしょうか。
こどもNISAは、NISAの「つみたて投資枠」を0歳から17歳の未成年も活用できるようにする制度です。次世代の資産形成を促進し、大学進学など子どものライフイベントに必要な資金に備えることを目的としています。通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISAの一種であるこどもNISAでは運用益が非課税になるため、税負担を抑えながら長期運用できる点が特徴です。
金融庁が公表しているこどもNISAの制度案によると、未成年の年間投資枠は60万円、非課税で保有できる上限は600万円。非課税期間は無期限で、口座名義人の子どもが18歳に達すると、自動的に成人後(18歳以上)のつみたて投資枠へと移行する仕組みです。また、12歳以降は、子どものための資金であることなど一定の要件のもと、払い出しが可能となる見込みです。
──未成年を対象にしたNISAには「ジュニアNISA」がありました。
ジュニアNISAは2016年に創設され、2023年末に新規口座開設を終了しました。金融庁の資料によれば、利用実績が乏しかったとされています。非課税期間が5年だったことから、この期間を超えて非課税保有を続けるには、ロールオーバーという手続きを行う必要がありました。また、原則として18歳までは資金の払い出しができませんでした。こどもNISAは、ジュニアNISAで指摘されたこうした課題を踏まえ、使い勝手がよくなるように設計されます。
親子でお金を考えるきっかけに
──口座名義人は子どもでも、投資資金を実際に用意するのは親や祖父母がほとんどではないでしょうか。
こどもNISAの意義は、親や祖父母の世代から見ると、子や孫といった「次世代に移す」と決めた資産を、名義や運用、税制の面から明確に切り分けることができることにあります。
こどもNISAに入れる資金を親や祖父母が用意する場合、実務的には贈与として整理されることが多いと思います。その際には、暦年贈与など贈与税の扱いにも注意が必要です。具体的な税務上の取り扱いは、税理士など専門家に確認するのがよいでしょう。
毎年、少額ずつ、時間をかけて資産を次世代に移し、その資金を長期運用することで大きな果実を目指す──。こどもNISAは、次世代への資産移転の器としても期待されています。
──代田さんが提唱する「投資は人生の早い段階から」「時間軸を味方につける」につながりますね。
加えて、こどもNISAの投資対象商品は、金融庁の案では「長期の積み立て・分散投資に適した一定の投資信託」とされていることも注目に値します。
資金の出し手が大人だとしても、こどもNISAをきっかけに子どもが投資や市場に関心を持つことができれば、実践的で有益な金融教育につながります。日本ではかつて、資産運用をどこか毛嫌いする風潮がありました。こどもNISAをきっかけに、家庭の中でお金や投資、将来の使い道について話す機会が増えれば、それ自体が実践的な金融教育になると思います。
──こどもNISAと自分自身のNISA枠との関係をどのように整理したらよいでしょうか。
まずはご自身の生活とNISA枠の活用を優先してください。そのうえで、こどもNISAに回せる資金があれば利用する、というスタンスでよいと思います。少額で構いません。たとえば、子どもがもらったお年玉の一部を、親子で相談しながらこどもNISAで運用してみるのも一つの方法です。それぞれの家庭の生活や教育方針、値動きがある投資信託のリスクをどこまで許容できるかといったことを踏まえて、無理のない形で活用することが大切です。
1962年生まれ。1985年三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行、年金資金や投資信託の運用業務などに携わる。三菱UFJ投信商品企画部長、三菱UFJ国際投信常務などを歴任し、投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」などを開発した。2025年3月三菱UFJアセットマネジメント常務退任。同4月に企業のブランド戦略や資産運用などを支援する「シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズ」を設立し、社長に就任。中央大学法学部兼任講師。国際公認投資アナリスト(CIIA)。主な著書に『オルカン思考 世界経済を味方につける「長期投資」の教科書』(Gakken)など。
