妊娠・出産でもらえるお金 出産費用が無償に?

妊娠、出産には公的な支援があります。子どもを産むことは個人的なことであると同時に、社会的なことでもあるからです。出生率や出生数が低下して少子化が進み人口が減少すると、日本の経済力も下がる可能性が高くなります。これを食い止めるために、妊娠・出産、その後の子育てに公的な支援が行われているのです。今回は妊娠・出産への公的支援を紹介しましょう。

妊娠中の支援

まずは、妊娠中の支援から。2025年から始まったのが「妊婦のための支援給付」です。妊娠がわかった(医療機関で胎児心拍が確認できた)時点で5万円、その後、妊娠している子どもの人数の届け出の後に子どもの人数×5万円を受取れます。窓回は住んでいる市区町村です。
妊娠がわかったらすぐに自治体に妊娠を届け出ましょう。母子手帳の交付、「妊婦のための支援給付」の申請方法の案内と併せて、妊婦健診の受診券なども受け取ることができます。

妊婦健診は、出産までの約40週、妊婦さんとお腹の赤ちゃんの健康状態を確認するために定期的に受けることが推奨されています。妊娠の前半は4週間に一度、その後は2週間に一度、最後の4週は1週間に一度、合計14回の健診を受けるのが標準です。問診や血圧測定、尿検査、血液検査、超音波検査など。

ただし、妊娠は病気ではなく妊婦健診も治療ではないため、健康保険は使えません。健診の費用は自費で、内容により1回あたり5000円から1万円程度です。14回分を合計すると10万円前後になります。この負担を軽減するための補助として各自治体では妊婦健診の受診券を配布しているのです。医療機関に提出することで妊婦健診を受けることができます。調査※によれば、すべての自治体で14回以上の補助が行われていて、公費負担額(補助額)は全国平均で11万3647円。お金として受け取るわけではありませんが、受診券を使うことで、妊婦健診の自己負担はほばなくなります。
※子ども家庭庁「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について」

出産への支援

次に出産への支援を見てみましょう。
出産も正常分娩なら病気ではないため、入院や分娩などの費用は健康保険が使えず全額を自己負担します。出産費用は、地域や利用する施設によりかなり幅があります。都道府県別では、最も低い熊本県が約40万4000円、最も高い東京都は約64万8000円。全施設における全国平均は52万円です(厚生労働省「医療保険制度における出産に対する支援の強化について」より令和6年度正常分娩の平均)。これはけっこうな負担ですね。

ただし、加入する健康保険や国民健康保険から50万円の出産育児一時金をもらうことができます。実際にかかった費用が50万円を超えているなら、超えた分は自己負担になりますが、出費がかなり軽減されます。逆に、実際にかかった費用が50万円以下でも50万円もらえます。
出産した子ども1人につき一律50万円(多胎児は人数分、例えば双子なら100万円)※ ※です。その条件と、り方法は次の通りです。
※※ただし、産科医療補償制度未加入の機関での出産などは子ども1人につき48万8000円

◎出産育児一時金を受け取れる条件
・出産した時点で日本の公的医療保険(健康保険や国民健康保険)に加入していること
・妊娠4か月(85日)以上での出産であること
・出産日の翌日から2年以内に申請すること

◎出産一時金の受け取り(申請)方法
・医療機関などの出産施設に「直接支払制度」利用の申し出を行います。「直接支払制度」
は、出産育児一時金を健保組合などから医療機関に直接支払う仕組みのため、高額な出産費
用を事前に準備する必要がなく、実際にかかった費用と出産育児一時金50万円の差額の精算ですみます。
・いったん費用の全額を医療機関に支払った上で、自分で健保組合などに申請を行って自分で受け取る方法などもありますが、手続きの負担が少ない「直接支払制度」の利用をおすすめします。

協会けんぽ |出産育児一時金・出産手当金|給付と手続き| 厚生労働省「医療保険制度における出産に対する支援の強化について」

そして、今後予定されているのが、出産(正常分娩)費用の全額を公的健康保険から医療機関に直接支払うことで妊婦の負担を無償にすることです。現在は医療機関がそれぞれに設定している出産費用を、病院の規模などが同じなら全国一律の価格に国が設定することが検討されています。新しい制度の導入時期においては、施設により現在の出産育児一時金の制度の適用も可能です。さらに別途、出産時の負担の軽減のためにすべての妊婦さんに定額の現金給付が行われます。
 これらは「健康保険等の一部を改正する法律案」として2026年5月末に国会で可決され、2年以内に施行されます。
 もれなく支援を受けるためには、自治体への妊娠の届け出がスタートとなります。
※令和8年改正健康保険法より


坂本 綾子(さかもと あやこ)・ファイナンシャルプランナー

雑誌記者として22年間、金融機関等を取材して消費者向けのお金の記事を執筆。その経験を活かしてファイナンシャルプランナー資格を取得。2010年より、金融機関に所属しない独立した立場で、執筆に加えて家計相談やセミナー講師も行う。著書に「子どもにかかるお金の超基本」河出書房新社など。日本FP協会認定CFP🄬

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