ニューヨークでの活躍の原点は留学体験にあった
ミサコ・ロックス! 本名:高嶋美沙子さん
法政一筋で思いをとげる
田中 現在はニューヨークを拠点に活躍されていますが、最初の渡米は本学の「派遣留学」だったそうですね。
高嶋 実はある映画スターに会いたくて(笑)、中学のときに、留学ができる大学を調べたんです。まだまだ選択肢が少なかった時代ですが、その中で法政は制度がとても充実していて、奨学金が支給されるものもあり、ここしかないと思いました。それからは法政一筋で猛勉強、高校で英文学科の推薦枠を獲得し、入学後も、大学の制度を目いっぱい利用させていただきました。
田中 理想的な学生、大学冥利に尽きます(笑)。法政はSA(スタディ・アブロード)など制度もさらに充実させて、海外への留学者数はいまや全国第3位。キャンパス自体をグローバル環境にすることも含めて、学生の「グローバル体験100%」を目指しているんですよ。
でも当時は、実際に留学するまで、けっこう大変だったのではないですか。
高嶋 はい、3年間みっちり勉強しました。なかでも「クリエイティブ・ライティング」のダイアナ・コー先生にはお世話になりました。とても厳しい方で、最初は自信がすっかり打ち砕かれましたが、あきらめずにコツコツ頑張れば認められるという体験をさせてもらいました。それが、その後の人生で大いに生きています。実は最近、先生がメディアで私を見つけて、メールをくださったんです。ミサコの作文は、観点が面白かったので覚えている、と。感激でした。
田中 現在コー先生は、すべての授業を英語で行うグローバル教養学部長を務めています。
高嶋 そんな学部が私のころにあれば......うらやましいです(笑)。でもおかげさまで、4年になるときに留学が実現。留学先はミズーリ州トルーマン州立大学で、すごく田舎でしたが、結果的にそれがよかったかもしれません。誘惑の多い都会のキャンパスだったら、私はあんなに勉強しなかったでしょう。
一緒に行った法政の学生たちとの付き合いも、あえて絶ちました。日本人同士固まったら、せっかく留学させていただいた意味がありませんから。
田中 それは、留学が容易になった今の学生たちにも、声を大にしていいたいですね。
留学で学んだ自立心が糧に

田中 卒業後、再びアメリカに行かれるわけですが、目的は人形師のインターンだったそうですね。
高嶋 日本でミュージカル『ライオンキング』を見て、演者より「かぶり物」に惹かれたんです。調べてみると、ニューヨークの若いアーティストたちが作っている。それが、留学先の友人たちの姿と重なりました。彼らは自分の進む道を見つけるために、インターンとしていろんな仕事にトライしていて、しかもその多くがアーティスト系だった。彼らと同じ土俵で勝負したい、という思いがふつふつとわいてきたんです。
田中 日本の大学のインターンシップ・プログラムは、1週間程度の中途半端なものが多くて、私は改革が必要だと考えているんです。アメリカは違うでしょう。
高嶋 たしかに、夏休みの3カ月間丸々使うようなものが普通で、それで初めて企業についても仕事についても何かがつかめる気がします。私の場合は結果的に、世の中には才能のある人がたくさんいて、熱意だけではやっていけないということをコテンパンに思い知らされました。
田中 最近の学生は、留学で得た英語力、あるいは留学したという経験そのものを就職の際の武器にしようとする傾向が強いんですが、ミサコさんにそういうお考えはなかったんですか。
高嶋 私が留学中に学んだのは、なにより自立心や価値観の広がりでした。アメリカ人の学生の多くは、学生ローンを組んだり奨学金をもらったり、自分の責任で大学に来ていた。それに引き替え、私は両親にオンブにダッコ、これではいけない、と。
田中 自立のモデルを目の当たりにしたわけですね。
高嶋 でも、そういう状況を今の法政のキャンパスなら作れますよ。海外からの留学生が増えているわけですから、彼らの話を日本人学生が聞く機会があれば、自分たちもまけてはいられないという気持ちになるでしょう。
田中 なるほど、それもキャンパスのグローバル環境の大切な要素ですね。

グローバル時代の子供たちに向けた作品を
田中 実は半年ほどニューヨークに住んだことがあるんですが、人がどんな恰好で何をしていようと、誰も気にしていなかったという記憶があります。東京もいまやとても自由な街ですが、変な人はあくまで変な人、そこは違いますよね。
高嶋 ニューヨークは「秩序はぶち壊せ」の精神ですから(笑)。それだけに、住んでいると鍛えられますよ。あちらでも、日本人女性はおしとやかというイメージがあって、どうしてもなめられる。私は、男性にも負けないぞという態度を身につけていますから、まずギャップに驚かれ、でもおかげで、交渉事はスムーズに進みます。
田中 日本人はなかなか破れない殻を何枚も持っているんですよね。海外ではそれを積極的にはずしていかないと。それも女性が率先してね。
高嶋 一方で、日本女性ならではの目配り、思いやりは大切にしたい。これは、女性がみんな他人に負けまいと気を張って生きているアメリカではもちろん、世界中で通用する強力な武器だと思います。
田中 是非そのことを元気な本学の女子にも伝えて、海外でどんどん活躍してもらいましょう。最近は政府がクールジャパンを喧伝するので、日本のマンガやアニメは海外で大人気という印象がありますが、実情はどうなんですか。
高嶋 あちらにも「オタク」がいるので、その熱狂ぶりが情報として目立つんでしょうが、実際はコミック自体は日本ほど読まれていません。中でも私の描くものは、中・高生が対象ですから、まずPTAに受け入れてもらう必要がある。流行を逃さないためのリサーチも欠かせない。アメリカの出版社は何もしてくれませんから、いまだにサバイバル生活です。
田中 これからはどのようなご活動を?
高嶋 日本での仕事を増やして、作品の連載も始める予定です。
そこでも、留学するとこんな素敵な出会いがあるよとか、日本人は人種差別を受けることもあるけど、守ってくれる人もいるよとか、自分の体験をもとに、グローバル時代に読む意義のあるものを描きたいと思っています。
田中 小・中学生がそれを読んで、海外や留学に興味を持つようになったら素晴らしいですね。ありがとうございました。

- コミックアーティスト(漫画家) ミサコ・ロックス! 本名:高嶋美沙子
1977年、埼玉県生まれ。2001年法政大学文学部卒。NY在住。法政大学在学中に奨学金派遣留学で渡米。卒業後人形師を目指してNYに単身渡るも、上手く行かず挫折を繰り返す。中学校の美術講師、ホームレス(!)などを経て、2年間の努力の末コミックアーティストとしてデビュー。ディズニーハイペリアン出版社から2作出版。自信の初恋・留学体験を綴った“Rock and Roll Love”はNY公立図書館が選ぶベスト・ティーンズ・ブックリストの一冊になる。英国漫画誌”DFC“の連載作品が英語教科書に採用。全米の小中高校大学やメトロポリタン美術館などで精力的に講演会を開催。雑誌”日経ウーマン“のウーマン・オブ・ザ・イヤー2010年の一人にも選ばれ、安倍総理夫妻がNY訪問した際”NYで活躍する日本人女性文化人5人“の一人として懇親会に参加。”If you put your mind to it, you can accomplish anything”をモットーに全米・日本の皆にマンガで表現し講演で伝えている。
詳細はwww.misakorocks.com
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