市民公開講座 医療事故調査制度施行10年 患者のみかた(見方/味方)~あなたにとって納得できる医療とは~【PR】

スクラップ機能は読者会員限定です
(記事を保存)

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

sponsored by 医療事故調査・支援センター(日本医療安全調査機構)

 医療事故の原因分析と再発防止を図る「医療事故調査制度」が施行されて10年。患者と医療者が信頼関係を築き、安全で納得できる医療とは何かを考える市民講座が開催されました。三宅民夫アナウンサーの司会のもと、取材VTRを交えながら、医療事故で幼い息子を失った医療対話推進者の豊田郁子さん、医療現場の改革に取り組む群馬大学病院の田中和美教授、日本医療安全調査機構の木村壯介常務理事が語り合いました。

〈パネリスト〉

田中 和美 氏 群馬大学医学部 医療の質・安全学分野教授

豊田 郁子 氏 イムスリハビリテーションセンター 東京葛飾病院 医療対話推進者

木村 壯介 氏 一般社団法人 日本医療安全調査機構 常務理事

〈司会〉  

三宅 民夫 氏 元NHKエグゼクティブアナウンサー、立命館大学 衣笠総合研究機構 客員研究員

医療事故から学ぶ 医療者と患者・家族の対話の重要性

 パネリストの豊田郁子さんは、2003年3月に当時5歳の長男理貴さんを医療事故で失いました。激しい腹痛で救急病院を受診した際、便秘と診断され帰宅。痛みが続いたため再び入院したものの、数時間後に容態が急変し、他界しました。当初、病院側から納得できる説明はありませんでした。

三宅  医療の安全を確保し再発防止を図る「医療事故調査制度」が施行されてから10年がたちました。本日は「患者のみかた」と題し、安心して納得できる医療とは何か、一緒に考えたいと思います。まず、豊田さんからお話を伺います。

豊田 郁子氏
豊田 郁子氏

豊田  カルテ開示を求めた時、病院側からは「医師は最善を尽くした」と告げられました。その言葉は「自分たちに非はない」と聞こえ、不信感が募りました。ですが、3年後の命日に墓前の花が病院からのものだと気づき訪ねたところ、当時の看護師さんと再会し、謝罪していただいたんです。事故に関わった医療従事者の方もまた、苦しんでいたことが分かり、憎しみの気持ちは和らぎました。その時に思ったのは、お互いが人として向き合うことで、不信感を取り除くことができるということです。

三宅  その後もさまざまな医療事故が起きる中、2015年に医療事故調査制度がはじまります。

木村  中立かつ公的な第三者機関「医療事故調査・支援センター」が法律に位置付けられました。本センターは、遺族や医療機関からの相談対応、医療機関からの事故報告と調査結果の受付、そして調査結果から得られた知見の提言・発信により再発防止を促すなどの役割を担っています。

三宅  豊田さんはこの制度に先駆けて、患者と医療機関とをつなぐ活動をはじめられたそうですね。

豊田  はい。患者さんのさまざまな相談に応じ、患者さんと医療者をつなぐ病院内の相談員、「医療対話推進者」として活動しています。

田中  このような職種の必要性を理解し、雇用した病院側の決断も素晴らしいと思います。すべての病院が医療対話推進者を配置しているわけではありませんが、時代は確実に変わってきたと感じます。

三宅  医療事故調査制度が施行されて10年で、何が見えてきたのでしょうか。

木村  わが国の医療事故調査制度は、医療機関が主体的にこの制度における医療事故であるかを判断し、調査するシステムです。外部専門家の参加が原則ですが、事故を起こした病院自らが原因を分析することで本質的な解決につながると考えるからです。事実の調査と患者ご家族と医療者との対話を通じて、当事者がともに納得して次へ進む。それが再発防止につながります。この意義が10年で少しずつ浸透してきた一方、地域によって差があり、今後も引き続き、医療事故に対する考え方を全国的に浸透させていくことが課題です。

新たな医療の形「シェアド・ディシジョン・メイキング」とは

 2010年代に腹腔鏡手術による医療事故が続いた群馬大学病院では、医療のあり方そのものを見直しています。患者とのコミュニケーション強化を重視し、医療者の教育プログラムを改定するなど、患者との対話を深める取り組みを進めてきました。その中心がカルテ共有と「シェアド・ディシジョン・メイキング」です。

三宅  群馬大学病院での納得できる医療を目指す取り組み。まずカルテ共有について、患者・家族にとって、また医療者にとって、どのような意義がありましたか。

田中 和美氏
田中 和美氏

田中  カルテ共有は、院内の専用端末で患者さんが自身の診察記録にアクセスできるシステムです。患者さんは履歴を振り返ることで、病状や治療への理解を深めることができます。医師も、患者さんに分かりやすいことが前提となるため、カルテの書き方が変わりました。患者さんからの質問や意見も増え、対話力の向上につながっています。

豊田  普段からカルテを開示しているということは、「患者から質問してもいい」という意思の表れですし、コミュニケーションのきっかけにもなりますよね。

木村  カルテは究極の個人情報ですから、プライバシーが守られた環境で患者さんがいつでも見ることができるという取り組みは素晴らしいと思います。事故報告が多い病院は良くない病院だと思われるかもしれませんが、多大なエネルギーを費やして自ら事故だと判断し、分析・調査・報告を行うのですから、実は医療の安全に積極的に取り組んでいる病院なのです。こうした認識も社会に広がりつつあり、良い傾向だと見ています。

三宅  群馬大学病院ではもう一つ、「シェアド・ディシジョン・メイキング」という新たな診察スタイルも取り入れました。日本語では「共同意思決定」といいます。

田中  シェアド・ディシジョン・メイキングは、患者さんが人生観や価値観、不安に思っていることなどを話し、医療者が治療の選択肢を示して、その治療が生活に及ぼす影響やリスクなどを説明し、患者さんと医療者が一緒に治療を決めていくプロセスです。「共同」は「協働」でもあり、患者さんと医療者がお互いに対等な立場で治療に臨むという意味も含まれています。緊急を要する時には難しいこともありますが、多くの場合は対話の時間があります。

豊田  患者さんと医療者が信頼を築きながら治療を選択することは、患者さんが納得できる医療や事故の防止にもつながると考えています。

患者さんと医療者がともにつくる、納得できる医療のために

 医療対話推進者の豊田郁子さんはリハビリテーション専門病院で、患者さんの思いが考慮されているかを検討する役割を担っています。ある高齢男性は、認知機能の低下が見られ、歩行や嚥下も難しくなってきたことから、別施設への入所を予定していました。しかし、退院が近づいてくると「家に帰りたい」と訴えはじめます。その理由は、豊田さんたちとの対話を通じて分かりました。男性は聴診器を作る職人で、未完の仕事が気がかりだったのです。

三宅 民夫氏
三宅 民夫氏

三宅  納得できる医療には対話が重要ですが、超高齢社会の今、患者さんが思いを伝えることが難しい場合もあります。退院後の気持ちを聞くことも大切ですね。

田中  退院後にも続く患者さんの人生を見据えた対応をしないと、本当の医療にはならないと思いました。豊田さんたちが患者さんの話を引き出せたのは、人としての尊厳を尊重したからこそだと思います。

木村  患者さんが医療者と病気以外のことを話す機会は、なかなかありません。医療から一歩離れた立場の医療対話推進者の役割は非常に大きいと感じました。私たちのアンケート調査では、「納得した医療を受けたと感じた要因」として、複数の治療選択肢の提示や丁寧な説明があったという回答のほか、自分や家族の希望を伝え相談できた、人生観・価値観を話せたといったことも挙げられました。患者さんと医療者とのコミュニケーションがとても重要であることを改めて実感しました。

三宅  コミュニケーションが医療の安心感に通じるということですね。一方、医療の現場では人材不足と効率化も課題となっています。

田中  難しい状況ですが、だからといって、シェアド・ディシジョン・メイキングをしないとはなりませんよね。医療者でなくともできる仕事はタスクシフト(業務の一部を他職種に移管)するなど、社会のニーズに応える形で医療のあり方を変化させていくべきだと思います。

豊田  医療対話推進者も国家資格を持たない医療従事者です。医師や看護師だけが頑張るのではなく、さまざまな職種の人たちが力を合わせることが大切です。

木村  患者さんの情報を医療従事者がチームで共有し、全員で補っていくことが重要ですね。

三宅  納得のできる医療を普及させていくためには、今後、どうしていくと良いと思われますか。

木村 壯介氏
木村 壯介氏

木村  現在のお薬手帳の活用や採血時にフルネームを名乗っていただく本人確認など、過去の事故に学び、改革されてきました。医療事故調査制度は事故の責任を問うものではなく、事故の原因を分析し、将来の事故を防ぐための取り組みなのです。事故から得られた知見を生かし、医療者と患者さんがともに医療の安全のために参加、協力していく姿勢が不可欠だと考えます。

三宅  私たちも医療の現場で何が起きているのかを知った方が良い、医療者だけでは医療安全は進んでいかないと感じました。医療者の努力も必要ですが、私たち一人ひとりも医療安全を意識して、医療界全体を応援していくということが大切だと思いました。

関連URL: 医療事故調査・支援センター(日本医療安全調査機構)HP

スクラップ機能は読者会員限定です
(記事を保存)

使い方
速報ニュースを読む 「スポンサード」の最新記事一覧
注目ニュースランキングをみる
記事に関する報告
7692537 0 スポンサード 2026/02/26 19:20:00 2026/02/27 09:32:14 2026/02/27 09:32:14 /media/2026/02/20260214-GYT8I00032-T.jpg?type=thumbnail

主要ニュース

おすすめ特集・連載

読売新聞購読申し込みバナー
プリファードソース

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)