環境・福祉社会対応の
次世代型高機能メカトロニクス
情報メディア教育研究センター所長/デザイン工学部システムデザイン学科 田中豊(たなかゆたか) 教授
田中豊教授
「アクチュエータ・センサや素材選びから設計、制御、製造と、一連の機械システムの総合デザインを行うメカトロニクスは成熟した分野ですが、組み合わせは無限大。使途の観点からはまだまだ発展の可能性を秘めています」と話すのはデザイン工学部システムデザイン学科の教授であり、情報メディア教育研究センター所長も務める田中豊教授。「有能なスタッフ」と呼ぶ研究室(高機能メカトロデザイン研究室)の学生たちと2015年12月現在、「次世代モーションメカニズム(MB)」「スマート&グリーンフルードパワー(FP)」「マイクロメカトロデバイス(MM)」「感性とインタフェースデザイン(IF)」の4つを柱に、社会の要請に応えた研究開発を進めています。
海洋エネルギー・資源開発を支える
次世代モーションメカニズム
今年度の研究室での夏合宿にて
次世代モーションメカニズムの実験風景
4つの開発プロジェクトの中でも、完成を間近に控えているのが「次世代モーションメカニズム(以下、MB)」です。「フライトシミュレータなどに用いられている、上下平行の2枚のプレートを数本の脚で接続し、下部プレートの足部分を軸に上部プレートを動かすパラレルメカニズム装置です。従来、固定した作りだった下部プレートを、回転する土台の上に直角駆動のアクチュエータ3脚を付けて可動式パラレルメカニズムとし、設置面積の縮小と可動角度の拡大を実現しました」
このMBは大学特許を取得。MBの技術を応用し製品化が進められている「動揺吸収型可動式桟橋」は、海洋エネルギー・資源開発を支える先端製品として期待されています。
「近年特に海洋資源・洋上エネルギー開発が見直され、洋上でさまざまな施設が建設されています。施設を建設するにはそのための設備が不可欠。それがこのMBです。5メートルほども上下することのある船体の揺れを、作業の安全性、効率性を高めることを目的に、油圧制御によるMBで吸収します。
特に難しかったのはソフトウェアの部分ですね。どのように揺れるのか、動揺が少ないのはどのような形状なのか。水平にバランスを取るように、揺れと反対に動くようシステムの制御もしなければなりませんから」
検証を助けたのが情報メディア教育研究センターの計算機環境です。起こりうる状況を多角的に想定し、流体の条件として設定して丸3日間計算。約1メートルの試作機を用いて海上で行った実験では、 0.5メートルの動揺を数センチまで吸収させることに成功。2015年12月現在、MBは2017年度中の完成を目指し、開発は最終段階を迎えています。
計算科学を用い、文理を越えて
全学の教育・研究を支える情報メディア教育研究センター
「この計算機環境がなければ、研究開発はこんなにスムーズにはいっていなかったと思います」と田中教授。所長として情報メディア教育研究センターを「各研究室や教員の研究も支えていますが、教育支援、研究、社会貢献の3つを目的に、学習力の向上やシステム開発および公開など、全学的な教育支援と社会貢献も行っています」と紹介します。
情報メディア教育研究センターは計算科学センターを前身とし、情報科学の社会的要請に応えて2005年に現センターへ改組。他大学・研究施設と異なり、ITを活用した教育支援システムの開発など社会科学や人文科学領域の教育・研究支援をはじめ、学問分野や大学という枠を越えた共同プロジェクトも行っていることが特徴です。
「学内では、文学部心理学科の授業での反転学習に関する効果検証や、デザイン工学部および経済学部でのプレゼンテーション相互評価システムを使ったプレゼンテーション技術の向上およびアクティブラーニングの実施、学外では、欧米では主流となっている、主要大学同士が協力して学習効率向上を図るための授業支援システムのオープン化を日本で先導するため、世界的に評価の高い授業支援システム『Sakai』を2011年に導入し、現在も利便性の向上に向けて取り組みを続けています」
日本最大級のオリジナル・ハードウェアコンテスト「GUGEN」へ応募した、光と音を楽しむブロック状おもちゃ「PRHYTHM(プリズム)」制作の様子。研究室では、さまざまなコンテストや展示会にも積極的に出場している
メカトロニクスの新たな可能性へ
幼い頃からメカを見るとその動きに興味を抱き、「構造や運動を分析したい」と東京工業大学工学部へ進学してから現在に至るまで、一筋にメカを研究し続けてきた田中教授。「好きなことを続けて来られただけでも幸せですが、世の中に役立つものを手掛けられるのは、また格別な喜びがあります」と話します。
MB以外の3つのプロジェクトもそれぞれ企業と共同で実用化に向けて研究。「スマート&グリーンフルードパワー(FP)」では流体力学を利用した作動油内の気泡除去による油圧システムの安定・効率化、「マイクロメカトロデバイス(MM)」では直径3ミリほどの流体マイクロアクチュエータによるロボットの小型化、「感性とインタフェースデザイン(IF)」では触覚解析による福祉支援デバイスの開発を推進。MBを含め、それぞれのテーマはさらなる応用も見込まれています。
「MMにおいては製品をただ小型化するだけではありません。これまで多くのロボットは電磁気の力を使って動かしてきたため、小さくすればそれだけパワーがなくなってしまうという問題がありましたが、流体パワーを使えば、たった3ミリでも1平方メートルあたり数十メガニュートン----つまり電磁気の数十倍のパワーを出すことができる。小さいながら力持ちのロボットを実現できるのです」。田中教授は次世代を担う新たなメカトロニクスの可能性に向かって研究開発を続けています。
- 情報メディア教育研究センター所長/デザイン工学部システムデザイン学科 田中豊(たなかゆたか)
1961年東京都生まれ。1983年東京工業大学工学部制御工学科卒業、1985年同大学大学院総合理工学研究科精密機械システム専攻修士課程修了。その後、東京工業大学精密工学研究所の助手を務めながら、1991年工学博士の学位を取得。1991年法政大学専任講師、1992年同助教授、2002年より現職。2014年4月より法政大学情報メディア教育研究センター所長も兼任。
専門はメカトロニクス・設計工学・機械機能要素。日本機械学会 機素潤滑設計部門 業績賞、日本フルードパワーシステム学会・学術論文賞ほか、多数の受賞歴がある。
著書に『アクチュエータ研究開発の最前線』(NTS、共著)などがある。
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